本研究では、携帯周波域電磁界の曝露装置を作成し、各発達ステージのマウスに電磁界曝露を行った際の生体影響について検討した。 妊娠マウス(C57BL/6)の仔の器官形成期である胎齢7日~17日(E7~E17)までの毎日、2.14GHz W-CDMA波をばく露群(EE群)においては全身平均比吸収率(Whole Body averaged Specific Absorption Rate;WB-SAR)が4W/kg (1h/日)となるばく露を、また対照として偽ばく露群(ES群)を用意した(各群N=10)。 生まれた仔は離乳時まで通常環境で飼育を行い、その後、雄に関して再度群分けし、以下の5群を作成した。①胎児期ばく露-幼若期偽ばく露(以下EE-JS群)、②胎児期ばく露-幼若期高ばく露(EE-JH群)、③胎児期偽ばく露-幼若期偽ばく露(ES-JS群)、④胎児期偽ばく露-幼若期高ばく露(ES-JH群)⑤胎児期偽ばく露-幼若期低ばく露(ES-JL群)。なお、幼若期の高ばく露、低ばく露はそれぞれSAR4W/kg、0.4W/kgであり、4週齢時点から1日1時間、週5日のばく露を実施した。 幼若動物へのばく露を継続しながら、幼若マウスが6週齢になった時点で上記①~④群に対して新規物体認識試験(Object Recognition Test; ORT)を行った。その結果、胎児期、幼若期のばく露が視覚的物体認識記憶の喪失との関連性は見られなかった。 上記①~⑤のすべての群は、引き続きばく露を継続し、8週齢の時点で解剖を行い、昨年同様に海馬における神経免疫バイオマーカーの遺伝子発現をReal-time RT-PCR 法で調べた。その結果、②胎児期ばく露-幼若期高ばく露(EE-JH群)のTNF-a あるいは COX2のmRNA 発現は対照群と比べ、有意に増加したことが認められた。
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