研究課題
基盤研究(B)
本研究では、動物およびヒトサンプルを用いDNAマイクロアレイ解析によるリン感受性遺伝子群の同定、末梢血、尿を用いた生体リン感受性代謝産物の日内リズムの解析、発達段階、日内リズム、標的臓器を統合した生体リン栄養シグナルのデータベースを構築を行い、生体リンセンシングの分子基盤の解明と生活習慣病予防・治療法の開発を目的としている。本年度は、高リン食(1.2% Pi)または低リン食(0.02% Pi)を摂取したマウス臓器、特に骨(骨細胞)と脳(視交叉上核)より抽出した全RNAを用いてDNAマイクロアレイ解析およびGene Ontology解析を行い、各臓器におけるリン感受性遺伝子群の同定を試みた。その結果、1)リン制限食は、血中コレステロール値、肝臓脂質蓄積および肝臓コレステロール代謝に影響を与えることを明らかにし、食事性リンは肝臓の脂質代謝関連遺伝子の発現調節を介し高コレステロール食誘導性の脂肪肝と高脂血症の発症に重要な役割を果たしている可能性を示した。2)リン酸輸送担体遺伝子Npt2aの欠損マウスでは、低リン血症だけでなく高コレステロール血症を呈し、高コレステロール食による血中脂質濃度への反応性が異なることを明らかにした。3)リン感受性遺伝子として小腸下部に発現する線維芽細胞増殖因子FGF15遺伝子の同定に成功し、FGF15遺伝子はリン制限食下の早期において発現上昇することを見出した。興味深いことにFGF15の役割には肝臓でのコレステロール/胆汁酸代謝の調節作用が知られている。このことから、リンによる肝臓の脂質/コレステロール代謝調節作用には腸管におけるFGF15がリンセンサーとして役割を果たしていることが示唆された。
3: やや遅れている
初年度は、代表者が研究機関を移動したため機器の購入や必要試料の入手に手間取り、さらに人的確保が難しかったために、やや遅れている。平成26年度からは、それらを確保ずみのため、遅れを取り戻せると考えている。
今後の推進方策生体リンセンシングの分子基盤の解明と生活習慣病予防・治療法の開発をするために、徳島大学と福井大学との共同研究を密に行いリンセンシング機構の詳細解析を進める。また、リンとビタミンD代謝との関連を明らかにしていく予定である。 1)初年度に引き続き、生体リンセンシング機構の解明を進め、データベースを作成する。特に、骨組織での解析により新規のリン感受性遺伝子群についても機能解析を進める。2)発達段階におけるリン摂取によるエピゲノム修飾の解析としてKlotho遺伝子に関して、発現解析およびヒストンメチル化抗体を用いクロマチン免疫沈降(ChIP)を行い、Klotho遺伝子上のH3K4のメチル化修飾、 H3K9のメチル化修飾を評価する。3)ヒトおよびマウスの末梢血、尿を用いた生体リン感受性代謝産物の同定として高リン食または低リン食を用いマウスおよびヒト試験を行い、経時的に血液および尿サンプルを用いてメタボローム解析を行い、リン感受性体内物質を同定する。
初年度は、代表者が研究機関を移動したため機器の購入や必要試料の入手に手間取り、さらに人的確保が難しかったために、次年度使用額が生じた。次年度の使用計画として、新たに研究分担者を2名追加して徳島大学と福井大学との共同研究により本研究課題の遂行を推進する。代表者は研究遂行のため必要な機器(スペクトロフォトメーター)の購入および分子生物学関連試薬、エピゲノム解析試薬、実験用動物、ポリクローナル抗体の購入を予定している。また、および国内外の学会での情報収集や成果発表を予定しているため旅費を計上している。さらに、論文投稿および掲載のために必要な経費を計上している。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 2件)
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