食事より摂取したNa+は消化管で吸収され、Na+出納に合わせた量が腎臓で排泄される。しかし、消化管でのNa+吸収に関しては、摂取したNa+のみではなく、摂取量の何倍ものNa+を含む消化液が加わり、多量のNa+として再吸収されている。これは消化管での吸収されたNa+の一部のみが体循環に入ることを示唆しているが、この消化管でのNa+代謝機構については十分に検討されていない。消化管でのNa+の(再)吸収機構に関しては、電気的中性のNaCl吸収機構とNa依存性の栄養素吸収機構が重要な役割をしており、特に後者はNa+吸収量が大きいと考えられる。しかし、栄養素吸収に必要なNa+の小腸管腔側への供給機序に関しては明らかになっていない。本研究ではこれら、消化管でのNa+代謝と栄養素吸収機構を解明するために異なる観点から以下の4つの研究を行った。1.小腸Na+依存性グルコース吸収機構と経上皮Na+フラックスの量的関係の解明。小腸上皮細胞にグルコースと共に吸収された多量のNaは管腔側の負電位を駆動力としてクロージン15で構成されるタイト結合部を介してNaが管腔側に循環することが示唆された。2.小腸ペプチド吸収機構と腸管Na代謝の関係の解明。ペプチド吸収は管腔側のNa+/H+交換輸送体NHE3と強く共役していることが示唆された。3.モデル動物であるカエルを用いた食性変化と腸管Na+代謝に関する研究。草食から肉食への食性変化でNa+摂取量は大きく変化するが腸管のNa代謝、Na依存性のグルコース吸収機構は大きく変化しないことが明らかになった。4.低Na摂取時の経細胞性経路の特性変化。Na+摂取量が低下した状態では腸管では陽イオン選択性のクロージンの発現が増加しており、この発現はアルドステロンで制御されていることが示唆された。
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