研究課題/領域番号 |
25282025
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
坂上 元祥 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (20283913)
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研究分担者 |
伊藤 美紀子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (50314852)
新田 陽子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (70403318)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖尿病末期腎症 / 高リン血症 / 血管内皮機能 |
研究実績の概要 |
心血管 疾患の原因となる動脈硬化の一つの発症機序として、血管内膜における内皮細胞の機能障害があり、食事内容が血管内皮機能に影響を与える事 が知られている。また食品添加物由来の無機リンは有機リンよりも吸収率が高いと報告がある。しかし、食物中のリンの形態差による血管内皮機能への影響は不明である。そこで食品添加物由来の無機リンが生体内のリン代謝、血管内皮に及ぼす影響を検討した。兵庫県立大学学生10名 を対象にして有機リンの多い天然高リン食、無機リンの多い人工高リン食をそれぞれクロスオーバー試験にて喫食し、経時的に採血・採尿を行い、血中リン濃度やリン代謝調節因子、血管内皮機能(FMD)について検討した。その結果、試験食のリン含有量は同量であっても、人工高リン食喫食後の血清リン濃度は天然高リン食を喫食した場合より高値を示し、FMD値の変化率は大きい傾向を示した。これは有機リンよりも無機リンの吸収率が高いため、リン代謝及び血管内皮機能に強い影響を及ぼしたと考えられた。この結果より無機リンを多く含む食事の動脈硬化・心血管疾患と関連が示唆された。今後対象者を増やしさらなる検討を行う予定である。 透析患者のリン摂取量調査として2014年度はコンビニ利用と加工食品からのリン摂取量の調査を行った。血液透析患者50名(男性24名、女性26名)を対象とした。食環境と食意識調査では有意差は無かった。一方、加工食品頻度調査では嗜好飲料水からのリン摂取量において、コンビニ利用が多い群の方が有意に多かった。 現状では食品添加物由来のリン摂取量の詳細は示されておらずため、リン摂取量の管理は困難である。本研究が今後の透析患者の食事選択の一助となり、予後の改善に繋がる事が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において最も重要な研究がヒトへのリン負荷試験である。この試験では有機リンと無機リンという形態の異なったリンを付加することで、リン代謝調節因子と血管内皮機能(FMD)への影響の差を検討している。予定通りに調査ボランティアが集まり、2014年9月~2015年3月に負荷試験が実施できた。一方、透析導入患者の継時的変化の調査は集まりが悪い状況のままである。しかし、これは当初より予想されたことであり、来年度でも継続する。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト試験とリン摂取量の調査は2015年度も継続する予定である。特に高リン食を喫食させるヒト試験は対象者をさらに増やし、論文化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の補助金の残金はなく、基金助成金の残高も約38万円と少なくなっている。ほぼ計画通りに支出が行われている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の補助金額は多くないので、基金の残金を合わせて執行する。
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