研究課題/領域番号 |
25282036
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
東原 貴志 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (10370850)
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研究分担者 |
荒木 祐二 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (00533986)
大谷 忠 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80314615)
井上 真理子 独立行政法人森林総合研究所, 多摩森林科学園, 主任研究員 (30414478)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 林業教育 / 技術教育 / 生物育成技術 / 技術・家庭科 / 学習指導要領 |
研究概要 |
森林の管理や育成などを扱う林業教育に関して、林学・林業の専門知識を有する人材育成を目的とした専門教育は明治時代から進められているが、国民すべてが理解すべき森林育成に関する技術的素養を育むための普通教育としての林業教育に関する内容はこれまで十分に検討されていない。そこで本研究では、新しい中学校技術・家庭科の教育課程に「生物育成に関する技術」の内容が導入されたことを踏まえ、中学校技術・家庭科における、森林の育成から利用に至るまでの指導内容について提案することを目的として、中学校技術・家庭科技術分野の生物育成に関する技術の内容を知識と技能の両面より検討した。具体的には、教科書や学習指導要領の内容分析、および林業技術を模擬的に学習するための栽培実験を行った。 その結果、中学校技術・家庭科技術分野の生物育成技術として、学習指導要領解説には作物の栽培、動物の飼育、水産生物の栽培が例示されているが、林業教育の知識に関する指導内容について分析した結果、動物の飼育や水産生物の栽培と同様に、作物栽培の指導の流れに沿って構成されていることが明らかとなった。したがって、林業技術に関しても「林木の育成」として同様に位置づけられることが考えられた。 また、ハツカダイコンを成長に合わせて適切に間引きすることにより、間引きを一切行わなかった場合や疎に植えた場合と比較して、収量が増加することを明らかとした。この栽培結果を題材化することにより、森林内での枝打ちや間伐などの実習を行うことができない多くの中学校においても、技術・家庭科の限られた授業時数において、林業の間伐の意義について模擬的に学習できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年次は、以下の2点の成果が得られたため、おおむね順調に進展していると判断した。 1)高等学校学習指導要領や中学校教科書の分析を行い、また、高等学校森林・林業関連学科の森林科学ならびに森林経営に関するカリキュラムの聞き取り、授業ならびに実習を参観を行った。その結果、中学校の生物育成技術に位置づけられる林業教育の知識に関する指導内容についてまとめることができた。 2)栽培森林の管理技術として重要な間伐の意義を、中学生に身近な作物の栽培体験を通して模擬的に学習させるため、ハツカダイコンなどの間引きが必要な作物について、その効果が明らかになる栽培条件を明らかにするための栽培実験を行った。その結果、ハツカダイコンについて、適度に間引いた場合には、全く間引かない場合や初めから株間をあけて植えた場合と比較してその収量が多かった。この栽培結果を題材化することにより、中学校技術・家庭科の限られた授業時数で間引きの技術を指導できることや、間伐の意義について模擬的に学習できることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、以下の通りである。 1)「林木の育成」に関する指導内容の検討について、中学校の生物育成技術に位置づけられる林業教育の知識(「林木の育成」)に関する指導内容について、1年次の研究成果をまとめた上で、学会誌に投稿を行う。同じく、林業教育の技能に関する指導内容の検討を行う。具体的には、高等学校学習指導要領農業編、かつて造林に関する内容が指導されていた中学校職業・家庭科教科書や、総合的な学習の時間導入後の森林・林業教育に関する実践例を収集し、中学校技術・家庭科技術分野で指導されている「作物の栽培」の技能に関する内容と比較検討する。 2)林業における間伐効果を模擬的に学習するための題材開発について、中学校技術・家庭科の限られた授業時数で栽培が可能である、ハツカダイコンなどの栽培実験を1年次に引き続き行い、間引きによる収量の増加を検討する。また、上記の授業実践に必要な学習指導案や教材、評価方法について検討する。 3)「森林の育成」「木材の生産」に関する教材開発について、林業の作業現場および製材工場の見学を行い、林業機械および製材機械の種類や活用方法についての情報収集を行い、林木の伐採から製材に至る工程の教材化について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
直接経費次年度額が発生した理由は、高等学校の視察を当初予定の上越市内と京都市内から埼玉県内と東京都内に変更したことや、また、研究打ち合わせを東京学芸大学あるいは埼玉大学で実施したことにより、研究分担者の旅費支出が少額あるいは発生しなかったためである。 次年度には、森林の育成と木材の生産についての現状調査、ならびに教材作成のため、林業の作業現場と製材工場の見学を予定している。そのため、参加者の旅費の他、レンタカーの借り上げ費等への支出を予定している。
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