本研究チームでは、平成25年に技術者倫理教育における学習・教育目標(以下,「学習・教育目標」)を確定した.その後,軽微な修正を経て,平成26年に「学習・教育目標」の解説を公表した。公表した「学習・教育目標」は,国内外の研究者と議論をおこない,その内容について検討を重ね、議論参加者から指摘された問題点や改善点を踏まえ,技術者倫理教育における学習・教育目標の改訂版(以下,「学習・教育目標2016」)を、平成28年度に定めた.また,「学習・教育目標2016」を達成するための具体的な学習内容,教育手法,評価方法,教材などをパッケージとしたモジュール型モデル・シラバス(以下,「モジュール」)の開発をおこなった.
改訂は、(1)類似項目,不要項目の整理、(2)学習・教育内容(学習活動指標)のレベル設定、(3)表現の簡明化、の3点を基本方針として実施した。その結果、これまでの「学習・教育目標」では22項目だったが,「学習・教育目標2016」では21項目となった.さらに、この21項目について、学習・教育内容のレベルを設定した.Coreは,機関やカリキュラムの別に関わらず,必要最小限の内容として設定している.Basicは,Coreの内容に加え,取り扱うことが望ましい内容として設定している.Advancedは,各機関やカリキュラムの特徴に応じて取り扱うことを検討する発展的な内容として設定している.これら3つのレベルは,カテゴリによって設定の観点が異なる.カテゴリ1,2は,知識・理解の対象範囲,深さによって区分される.カテゴリ3は,スキル・能力の理解,応用,分析・評価と区分されている.カテゴリ4は,価値・態度について,理解から,反省的考察,自己形成というレベルで設定されている.
この改訂により,研究の目的であった国際的に通用する技術者倫理教育の学習・教育目標の明確化をほぼ達成した。
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