研究課題/領域番号 |
25282050
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
浦野 弘 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (50185089)
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研究分担者 |
益子 典文 岐阜大学, 学内共同利用施設等, 教授 (10219321)
谷塚 光典 信州大学, 教育学部, 准教授 (30323231)
姫野 完治 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (30359559)
島田 希 高知大学, 人文社会・教育科学系, 講師 (40506713)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 教師教育 / 教師の質保証 / 学び続ける教師 / 教師の資質・能力 / ポートフォリオ |
研究概要 |
教師という専門職を生涯にわたり遂行するためには,教員養成と現職教育を一連の専門性発達プロセスとして位置づけ,反省的実践家としての学び続ける教師の育成とその集団形成の条件の明確化が重要な課題である。そこで,初年の平成25年度には,「自律的に『学び続ける教師』を規定する能力の解明」に主眼をおき,以下の4つの研究課題を遂行した。 ア)「学び続ける教師」に関連する概念や信念を整理するために,基本文献にあたり,その検討をした。その結果,これまでの注目度の低かったレジリエンスあるいは効力感という教師の感情が今後重要なキーであることを見いだした。イ)教員養成をする立場から,教師の「資質・能力」をどのようにとらえ,その形成のための方略について,検討を行った。このア)及びイ)をもとに,教師個人の自己内意識と教師集団の中での個人としての状態から捉える一つの「教師が経験から学ぶ条件モデル(案)」を構築した。また,教師集団としての校内研修会における授業研の役割についてもリーダの重要性が示唆された。ウ)教職ポートフォリオの基本フォームの事例を教員養成大学学部から収集し検討をした。その結果,Web上でeポートフォリオを作成する大学と紙ポートフォリオを用いる大学はほぼ同数であり,Web上から紙媒体に移行した大学も見られた。リフレクションについては,学生間で相互閲覧や相互コメントが効果的に機能している事例を見いだせた。エ)実務家教員から見た教員養成について,とりわけ行政サイドからの意見交換を行った。 研究代表者及び分担者による研究打合会を3回開催し,意見交換及び各進捗状況を確認した。また,国立大学教育実践研究関連センター協議会の教育実践部門会において,9/20及び2/17に進捗状況を報告すると共に意見交換を行った。さらに, 2/16に,キャンパス・イノベーションセンター東京において,全体の報告会を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間全体の研究計画に示した研究課題1)「学び続ける教師」に関連する概念の整理とその構造化,研究課題2)「学び続ける教師」の核となる資質・能力・信念の解明については,おおむね順調に進展しており,研究課題1)については来年度の計画である「学び続ける教師」の関連概念の整理やその構造化にも一部着手することができ,この点では計画以上に進展している。研究課題3)教師の「学び」を記録するための教職ポートフォリオの標準化についても,本年度の計画である記録フォームの収集とその検討がなされ,特徴的なものを見いだす事ができている。一方,Web上で管理するeポートフォリオの構築が望ましいという視点から本研究はスタートしたが,それは必ずしも適切ではないと判断している大学もあることから,教職ポートフォリオのプロトタイプの検討は行うが,eポートフォリオそのものの設計は行わないこととした。研究課題4)「学び続ける教師」の質保証の制度設計に関しては,国立大学教育実践研究関連センター協議会の教育実践部門会の構成員の中から,実務家教員の方を募り,研究協力者として意見交換を行った。
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今後の研究の推進方策 |
次の5つの側面から研究を遂行する。 (1)「学び続ける教師」の核となる資質・能力・信念の特性:医療や看護等の専門職の成長に関する文献等の収集を図ると共に,(5)との連携のもとに,現職教員や大学勤務の実務家教員に対して聞き取り調査を行い,現職教員が考える「教師の資質・能力」に関する情報収集を行う。(2)「学び続ける教師」の質保証という側面から捉えた学校組織の特性:組織体の中での教師の成長を捉えると共に,学校内での若手の指導・支援体制あるいは全校での校内研修等のあり方について検討する。(3)教職ポートフォリオの標準化を目指した「学び続ける教師」に関連するキー概念の構造化とカリキュラム化:現在使用されている教職ポートフォリオにおける「学びの記述」という視点からその比較検討を行うと共に,電子化から再び紙媒体に移行しているその実態や背景を取り上げ,運用面からの検討も行う。(4)「学び続ける教師」の養成という側面から捉えた大学における教員養成の課題と展望:丸投げから大学主導の教育実習へと変容しつつある中,自律的に「学び続ける」という指導に焦点をあて,検討する。(5) 採用あるいは任命権者の側面から捉えた教員養成の課題:採用あるいは任命権者側の職の経験を有する実務家教員の協力のもとに,教員養成の核となる「学び続け教師」への期待とその意識,ねらいのギャップ等の検討を試み,採用者側が考える「教師の資質・能力」に関する情報収集を行う。 次年度の遂行に当たっては,5・8・3月に研究代表者及び分担者等による研究打合会,9月開催の国立大学教育実践研究関連センター協議会教育実践部門会において中間報告及び意見交換を行う。それらの成果をふまえ,日本教育工学会研究会等で研究成果の報告を行い,2月開催の国立大学教育実践研究関連センター協議会の日程合わせて,2014年度の報告会を行うようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
「学び続ける教師」の質保証の制度設計に関する課題について,国立大学教育実践研究関連センター協議会の教育実践部門会の構成員の中から「実務家教員から見た教員養成」について意見交換が可能な実務家教員の方を募ったところ,想定以上の多くの方から研究協力者としての協力が得られるようになり,そのために旅費等が当初額の倍以上かかると見込まれた。そこで,当初額から図書購入費及び資料起こし等の人件費を削減し,その旅費に充てるように準備を進めた。この状況を研究協力者にもご理解を願った上で,意見交換会等を実施したところ,パック旅行等の活用により,研究協力者の旅費が予想外に安価に済み,結果的に当初の計画額とほぼ同額になった。 次年度においては,未購入であった図書等,ソフトウェア及び記録媒体等の消耗品,昨年度から積み残してある資料及び記録等を起こす作業を進めるための人件費等に繰越額を使用し,また,新規分担者及び研究協力者等の想定される旅費の増額にも対応できるように計画することとした。
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