研究課題/領域番号 |
25282052
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
柴田 好章 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (70293272)
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研究分担者 |
坂本 將暢 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (20536487)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 授業研究 / 授業分析 / 教師教育 / 可視化 / 授業洞察力 |
研究実績の概要 |
本研究では、教育専門職の主要な力量である「授業洞察力」の向上に資するよう授業過程の可視化技法を体系化することを目的とし、次の5つの課題に取り組んでいる。 (1)「授業洞察力」の構造の明確化 、(2)既存の授業分析手法の改良と可視化手法の新規開発、(3)授業過程の可視化技法のシステム化 、(4)授業過程の洞察(気付き・価値付け・説明)における可視化技法の効果の検証、 (5)授業洞察力への転移の効果の検証。この5つの課題のうち、5年計画の第2年次にあたる平成26年度は、初年時に着手した以下の(1)を継続しながら、(2)を中心に研究を進めた。また、並行してフィールド調査を実施し、授業記録の収集を進めて、手法の試験的適用と、各種の可視化手法の開発と改良を行った。 学校や教育委員会が行う授業研究会への参画(企画・運営・指導を含む)や、自主的な授業研究のための研究会の開催・参加を通して、授業逐語記録にもとづく質的な授業分析の過程から、そこに働く洞察力を明らかにした。質的な授業分析において、授業の何に着目し、どのような情報を抽出しているのかを検討することを通して、量的または定式的手法の開発指針を得た。 また、研究室の共同研究として、可視化手法開発のための研究プロジェクトを組織し、授業記録の分析に資する授業過程の可視化手法の開発や改良を行った。特に、数量化理論などの多変量解析、中間記述言語、オントロジーの適用を試みた。 さらに、授業逐語記録にもとづく国際比較授業分析を行い、文化複合という観点から授業の構造を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関連文献の収集、文献の検討、フィールド調査によるデータ収集、可視化手法・分析手法の開発、成果の発表などを、計画に沿って行うことができた。1)教師教育学、授業研究の関連文献の検討を通して、授業研究における事実の認識、気付き、解釈、熟慮、価値付け、概念化、説明という一連の過程における洞察力を明らかにした。2)既存の授業分析手法や新たな授業分析手法の開発を試み、複雑な授業過程を可視化することができた。3)海外の授業を分析することを通して、文化複合という観点から授業の構造を可視化することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2年間の成果を踏まえ、次年度以降は以下のとおり研究を進める。 (1)「授業洞察力」の構造の明確化 、(2)既存の授業分析手法の改良と可視化手法の新規開発の課題を継続しながら、以下の(3)~(5)の課題に取り組む。 (3)授業過程の可視化技法のシステム化・・・多様な手法を有機的に組み合わせた Web アプリケーション のソフトウェアを開発する。様々な手法を統合的に利用できるようにするために、統一的なデータフォーマットを定め、システムの基本設計を行なう。具体的なプログラミング作業は、中核的なアルゴリズムについては研究代表者が行い、周辺部分については外注する。 (4)授業過程の洞察(気付き、価値付け、説明)における可視化技法の効果の検証・・・・自己の授業のリフレクションや、協同的な授業研究に取り組む教師や、対話リフレクション、メンタリングを行なう教師教 育者、授業実践を対象とする教育研究者に、開発したシステム を使ってもらい、授業における発言や行動の背景の読み取り方が深くなったかどいうかを質的および量的に評価する。そのために、研究拠点校に専用クライアント PC を設置し、サーバ(大学)と VPN で接続する。1年あたり、国内10回、海外1回のフィールドワー クを実施する。 (5)授業洞察力への転移の効果の検証・・・可視化技法を使った際に効果が見られた教師等を対象にして、その経験が可視化技法を使わないと きにも転移して、授業洞察力の向上に寄与しているかどうかを質的および量的に検証する。教師・教 師教育者・教育研究者の、それぞれ授業改善、教師教育、理論構築という固有の役割における効果や、 非専門職との対話における効果を明らかにする。
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