研究課題/領域番号 |
25282058
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安武 公一 広島大学, 社会(科)学研究科, 准教授 (80263664)
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研究分担者 |
中村 泰之 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (70273208)
多川 孝央 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 助教 (70304764)
山川 修 福井県立大学, 学術教養センター, 教授 (90230325)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 教育工学 / 協調学習 / 理論分析 / 数理モデル / ネットワーク科学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は学習環境を「多重ネットワークの場」としてとらえた方法論にもとづいてLearning Analyticsの理論的基盤を構築することであった.今年度の研究では,(1) Complex Networks Science研究の急速な展開に沿って,計画調書作成の段階では「多重ネットワーク」と定義していた空間をMultiplex Network,あるいはMultilayer Networkとしてとらえ直し,(2) Multiplex Networksの構造とそこに配置された学習者の協調的な行動の関係を「囚人のジレンマゲーム」として定式化し,(3) 理論分析(シミュレーション)分析などを行なった.研究の結果,次の知見を得た.(1) 2層構造の Multiplex Networks を仮定した場合協調的な活動の広がりは,Scale Free Networksどうしを組み合わせた環境に限られることを確認した.(3) 3層構造のMultiplex Networksの環境下でも同様の結果を得た.つまり,少なくともわれわれのモデルによる理論研究に関する限り,Small World性は協調活動の普及という点においては阻害要因となっていることを見出した.(4) この結果はScale Free Networksだけで構成されているわけではない現実世界で観察される結果とは整合的ではない.ということは,ゲーム構造のどこかに「協調行動の普及」の鍵が潜んでいるということである.以上の結果は,International Workshop on Complex Networksなどの国際会議で発表した.
さらにわれわれはJSiSEの全国大会においてLA研究に関する企画セッションのコーディネータも担当した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れているとした理由は,本研究では近年急速に発展しているLA研究の動向をうまく取り入れることができていないからである.欧米のLA研究ではWareableセンサーを用いて生理学的データを収集/解析するアプローチが提唱されはじめている.この研究の知見を導入することによって「学習のメカニム」と「協調的活動」の関係をとらえた理論研究を進展させることができると睨んでいると判断しているが,われわれがこれまでに行なった研究は非常に単純な「囚人のジレンマゲーム」に依拠しているため,このことをうまくとらえることができていない.
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度の今年度は,NetworkデータだけではなくWareableセンサを使った「ミクロ・レベル」での学習行動と学習メカニズムの関係に注目したデータ解析を行なう.この結果をシミュレーションモデルに組み込むことによって,「ミクロレベルとマクロレベル」双方のレベルをとらえた,新しい教育工学/学習科学研究のための理論的枠組みを提案する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
例年3月頃に開催されていた大規模データ解析の国際会議であるLearning at Scale(L@S)とLearning Analytics and Knowledge (LAK) への参加を2015年度に予定していた.しかしこれらの会議は2015年度の3月ではなく2016年の4月にUniversity of Edinburghで同時開催されることとなった.そのためこれらの会議に参加するために必要な旅費は2015年度には使用せず,翌年度に繰り越すこととなった.
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次年度使用額の使用計画 |
大規模データ解析の国際会議であるLearning at Scale(L@S)とLearning Analytics and Knowledge (LAK) が2016年4月にUniversity of Edinburghで同時開催される.この会議に参加する.加えて研究最終年度は2017年3月にVancouverでの開催が予定されているLAK2017での発表なども予定しており,次年度使用額はこれらの旅費等に使用する.
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