研究課題/領域番号 |
25282066
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研究機関 | 二松學舍大學 |
研究代表者 |
町 泉寿郎 二松學舍大學, 文学部, 教授 (40301733)
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研究分担者 |
酒井 シヅ 順天堂大学, 医学部, 教授 (00053033)
松村 紀明 帝京平成大学, 公私立大学の部局等, 助教 (00422379)
合山 林太郎 大阪大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (00551946)
小曽戸 洋 北里大学, 付置研究所, 研究員 (90186693)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 華岡流 / 医学塾 / 漢学塾 / 蘭方 / 古方派 / 難波抱節 / 吉益流 |
研究実績の概要 |
19世紀前半の日本に広く見られた漢蘭折衷医学に関する総合的研究を目標に掲げた本研究計画も、前半の二年を経過して、従来の研究の問題点とともに、漢蘭折衷医学の実態が少しずつ明らかになってきた。これまで在村蘭学・地域蘭学があげた研究成果は、各地域の文化的活力を復元し、従来の都市中心の近世観を覆すに十分であった。しかし洋学知識の遍在は必ずしもその医療内容を保証するものではなく、蘭学・蘭方の折衷の内実が殆ど説明されていない。19世紀日本医学の実態追求には、情報発信側の記録だけでなく、受信側(学習者側)の記録等の総合的な検討が必要と考えて、折衷の論理と臨床実態を追及した。華岡流については、新出の華岡家門人録の資料化と分析を更にすすめる一方で、岡山地方等の在村医の資料から、吉益流古方を基盤にした臨床医学の上に華岡流外科や小石流蘭方を受容されていたことを明らかにした。大阪華岡塾の実態解明についても順調に進捗しつつあり、大阪華岡塾の顕彰運動につながった。近世大坂の学芸の性格を解明するために、適塾の研究とも連携を図った。折衷の理論解明には、海上随鴎・野呂天然ら従来異端とされる蘭学者の業績の見直しを行った。臨床実態の解明には、服部宗賢の投剤記録などを分析検討した。蘭学普及の一方で、中国医学古典研究がどのように変容するかという問題を傷寒論の注釈によって検討した。政治・社会と蘭学との関わりについては、新たに水戸藩の教学・医学を検討対象に加えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終的な目標は、19世紀前半の日本の医学・医療の状況を明らかにすることである。従来の医学史研究は、西洋医学系と漢方医学系の研究が別々に行われる傾向があり、転換期の医学状況を正確に把握することは、立ち遅れていたといえる。平成25・26年度の研究計画の推進を通して、「19世紀前半の日本の医学・医療の状況」の概要を把握することができた。研究前半の2年間の研究状況として、ほぼ順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
「19世紀前半の日本の医学・医療の状況」の概要を把握できたことを受けて、その内容を論文・口頭発表・講演・シンポジウム等の様々な形で広く内外に公表し、研究成果の共有化やブラッシュアップにつとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画が掲げている主要な研究対象の一つが、華岡青洲の弟鹿城に始まる大阪華岡家の合水堂資料である。当初予定では平成25年度中に資料の移管が完了する予定であったが、平成25年度中には過半が武田科学振興財団杏雨書屋に譲渡され、残りの資料の譲渡は平成26年度末にずれ込んだ。この資料の移管の遅滞によって、研究資料の複写や入力作業等の謝金の使用に影響が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度末までに、研究着手時に当初予定していた研究対象―すなわち大阪華岡合水堂資料、岡山難波抱節資料、倉敷赤木家資料、服部宗賢資料のすべて利用可能な状態になったこと、またしかるべき段階まで複写等による資料収集が進捗したことを受けて、資料の解読と分析に力を注ぎ、資料や論文など研究成果を作成することに力を注ぎたい。研究費の使用計画としても、そのための人件費等に予算を振り向ける予定である。
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