研究課題/領域番号 |
25282068
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
松原 洋子 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (80303006)
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研究分担者 |
石川 准 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (60192481)
菊池 尚人 慶應義塾大学, メディアデザイン研究科, 特別招聘准教授 (30599501)
松原 聡 東洋大学, 経済学部, 教授 (00173865)
山口 翔 名古屋学院大学, 商学部, 講師 (90614123)
常世田 良 立命館大学, 文学部, 教授 (70632272)
湯浅 俊彦 立命館大学, 文学部, 教授 (70527788)
立岩 真也 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (30222110)
池下 花恵 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (50709847)
青木 千帆子 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (00584062)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 科学技術社会論(STS) / アクセシビリティ / 図書館 / 電子書籍 |
研究概要 |
I.障害者と高等教育:① 障害者差別解消法成立等の障害者政策の動向が報告された国際シンポジム“Disability Rights and Information Accessibility”(2014年3月、UCバークレイ)開催に協力した。② 東京大学文学部の初期の視覚障害学生読書支援について、当時の関係者の聞き取り調査を実施した。 II.障害学生と図書館:①近畿圏の大学附属図書館における障害学生サービスの聞き取り調査を実施した。著作権法37条対応のサービスに着手されていない実態が明らかになった。その結果を、2013年12月に主催した公開企画で、著作権法37条に関する図書館ガイドラインの策定過程とともに報告した。 ②高等学校での障害者対応について全国学校図書館協会理事に対して聞き取り調査をした。 ③フランスにおける障害者向け電子図書サービスについて、法制度の変遷とその影響を現地調査し、その成果を障害学会で報告した。 ④障害学生サービスの現状について、米国の大学附属図書館、公共図書館等を現地調査した。 III.電子書籍とICTによる支援:①電子データ複製の迅速で安価なシステムの実現について、立命館大学図書館と協力し高速ブックスキャナを利用したデータ作成に関する実証実験を実施した。作成データの共有について国立情報研究所での聞き取り調査を行った。 ② 産官学を横断し、電子書籍普及と読書アクセシビリティ向上を両輪とするICT社会の設計を促進する企画を国際公共経済学会で実施した。 ③アクセシビリティに配慮したデジタル教科書デバイスの導入を検討した。 ④ディスレクシア対応電子書籍の条件を実験的解明のため、関係者の協力を得て予備調査を実施した。 ⑤読書障害者支援の条件を充足するEPUB3の研究を実施した。さらにコンテンツ提供者の協力のもとに、アクセシブルな電子絵本を製作・展示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「I.障害者と高等教育」、「II.障害学生と図書館」、「III.電子書籍とICTによる支援」について、おおむねバランス良く研究を展開できた。特に近畿圏の大学図書館の読書支援状況について、面接調査を行い実態を明らかにしたこと、それを全国の大学図書館関係者を対象とした公開企画で報告したことは、先駆的であり、本研究の目的を実現する上で極めて重要であった。また、米国とフランスを中心とした海外調査を実施し、現地図書館でのICTを活用した読書アクセシビリティの現状を把握するとともに、ディスレクシア対応の電子書籍コンテンツとデバイスに関する調査を実施することができ、次年度以降の課題に先行的に着手することができた。IとIIの歴史的背景に関する研究調査については、関係者インタビューの実施にとどまったが、次年度はこの成果発表および資料収集と分析を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
2013年6月に障害者差別解消法が成立し、2016年4月の障害者差別解消法施行に向けて、大学図書館でのアクセシブルなコンテンツ利用の環境整備が急速に求められている。初年度の研究成果から障害学生支援体制と大学図書館の連携が予想以上に乏しいこと、図書館における障害学生支援の財源確保が現状では困難であることが明らかになった。 今後は利用者の希望と制度的・予算的に実現可能なシステムについて、社会資本の活用を考慮しつつ検討する。そのための実証実験とステイクホルダーの連携と情報共有を推進する。あわせて制度とコストに関する国際比較の基準を考案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究はその性格上、急速な技術と制度の変動に応じて柔軟に計画を微修正して実施する必要がある。当初電子教科書に関するサブプロジェクトを厚く考えていたが、初年度に急速に進展した電子書籍開発および自治体での電子教科書導入状況を勘案して、日本ではディスレクシア対応にシフトした。ディスレクシアに対する電子書籍アクセシビリティの実証研究は国際的にも進んでおらず、その研究を担当できる分担研究者の参加を得られたためである。 電子教科書関係で予定していた会議開催のための旅費、人件費、謝金等は、ディスレクシア対応の調査とデバイス作成の経費を上回っていたため次年度使用額が生じた。 初年度の研究成果をまとめ、各方面に発信するための人件費、資料費、会議費、旅費、謝金に使用する。また、大学図書館でのアクセシビリティ向上に必要な実証実験経費に活用する。
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