研究課題/領域番号 |
25282069
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大山 幹成 東北大学, 学術資源研究公開センター, 助教 (00361064)
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研究分担者 |
高田 克彦 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 教授 (50264099)
星野 安治 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (50644481)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 年輪年代学 / アスナロ / 年輪幅 / 安定同位体 / 集団遺伝 / EST-SSRマーカー / 産地推定 |
研究実績の概要 |
研究2年目は、初年度に収集した試料の年輪幅解析、酸素安定同位体比の試料準備と分析、開発したEST-SSRマーカーによるアスナロの集団遺伝学的分析を行った。 年輪幅解析では、岩手県ヒバおよび長野県産アスナロの年輪幅平均曲線を構築した。岩手県産試料は、青森県のヒバと同調性が確認された。一方、長野県産の試料は、北東北とは同調性が認められなかったが、長野県産のヒノキと同調性が確認され、北東北とは異なる年輪幅変動を有することが明らかとなった。また、木質文化財資料として、総ヒバ作りとされる江差・旧中村家住宅の調査を行い、天井板、建具など80点の部材について、年輪画像を撮影した。 安定同位体については、青森県産2点(下北、津軽各1点)について、それぞれ約150年輪の酸素安定同位体比を測定した。その結果、両者には高い同調性があることが確認された。また、今後、安定同位体比および年輪幅を測定する試料として、万福寺のヒバ材、弘前藩上屋敷の出土材を収集した。 昨年度開発したEST-SSRマーカー22座のうち、19座を用いたアスナロ、ヒバの集団遺伝学的分析を行ったところ、アスナロとヒバは異なるグループに分かれることが示唆された。またヒバの集団でも地域ごとにある程度のグループに分かれることも示唆された。 以上のように、年輪幅、安定同位体比、DNAマーカ-共、今後の産地推定に資する有用な基礎データを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アスナロの年輪幅変動については、初年度に収集した長野、岩手県産の解析および、新潟・佐渡産の計測を進め、地域内、地域間での変動の類似性について一定の知見を得ることができた。これについては、当初予定した成果を収めている。木質文化財資料については、江差・旧中村家住宅で年輪幅画像を取得し、ヒバの分布最北端での年輪幅試料を得た。これらについては、現在計測を行っており当初の予定通りに進展している。 安定同位体については、森林総合研究所において、青森県産の試料を測定し、個体間で高い同調性があることを見いだした。今年度中に、長野県産のアスナロ試料についても測定を行う予定であったが、測定時間を十分に取ることができないため、予定より若干の遅れが生じている。また、新たな現生試料、木質文化財資料の確保については予定通り進展した。アスナロ・ヒバの集団遺伝学的解析については、当初の予定通りEST-SSRマーカーの開発、集団遺伝学的解析が進展した。以上より、3つの研究項目の内、安定同位体比についてやや遅れがみられるため、全体としては、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
年輪幅解析については、現在年輪幅を計測している佐渡産や旧中村家住宅も加え、地域間の年輪幅変動の類似性について、総合的な解析を実施する。また、安定同位体比の測定については、長野県産現生材の測定を早急に進めると共に、弘前藩上屋敷、万福寺など木質古文化財資料の測定を進める。得られた結果を基に、安定同位体比の地域間の類似性について 検討を行う。DNAマーカーについては、現生木材および木質文化財資料でのDNA抽出および増幅を試み、現生葉試料で得られた成果の応用を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、今年度までに長野県産アスナロの安定同位体比測定を終了させる予定であったが、測定時間を確保できなかったため、未測定である。そのため、当初の予定と使用額に差異が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
未測定の試料については、最終年度に測定を実施する予定により、そこで研究費を使用する計画になっている。
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