研究課題/領域番号 |
25282071
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高橋 京子 大阪大学, 総合学術博物館, 准教授 (00140400)
|
研究分担者 |
川瀬 雅也 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (90224782)
上田 貴洋 大阪大学, 総合学術博物館, 教授 (70294155)
吉岡 芳親 大阪大学, 免疫フロンティア研究センター, 教授 (00174897)
橋爪 節也 大阪大学, 総合学術博物館, 教授 (70180817)
松永 和浩 大阪大学, 総合学術博物館, 講師 (90586760)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 文化財科学 / 生薬 / 生物多様性 / 本草博物学 / 非破壊分析法 |
研究概要 |
グローバル化時代、近現代と東アジアを中心に世界の中で、日本文化の意義を明確にするには、現存する遺産の科学的調査・恒久保存の実践に基づいた普遍性の立証が不可欠である。本研究は (A)本草学的視座に基づく生薬材料データベース・統計学的比較解析法を用いた対象特性の数値化と新規薬史学的解読論の確立、(B)薬用部位が異なる多様な生薬標本の基原解明を可能にする非破壊的鑑別法の開発、(C)本草図譜・草木葉譜の現状調査と連携した実用性重視の修復・復元法の提案、(D)自然遺産・森野旧薬園の復元・継承の基軸は、植物環境のフィールド調査で確認した生物多様性に特化した自然管理法と実践手法の具体化を目指す。 本研究では、平成25年度において、(A)本草学的視座に基づく検証から(B)非破壊的分析法構築に繋ぐ基礎検討を行った。薬用資源に非破壊的に文化財分析(デジタルマイクロスコープ、色度計、核磁気共鳴法(MRI)を応用して品質評価、特に基原植物の形態解析を行ったが、形態学的特性の可視化は生薬種判別に実践的であった。また、天然物と人工物の鑑別は安全・有効性の担保という課題が伴うが、古文書に記録された経験知に基づく栽培や薬効、近世の生薬標本類(医療文化財)の実態物の形態解析から得られた情報が、有用であることが実証できた。また、(D)自然遺産「森野旧薬園」の薬園管理者が実践する篤農技術継承のため、奈良県医療政策部薬務課が平成25年春から推進する大和産生薬栽培指導者育成指導に協力し、篤農技術記録蓄積を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本草学的視座に基づく生薬資料遺産の薬史学的価値並びに評価法の確立に関する成果は文理複合領域のため適切な論文投稿先が乏しく、論文投稿が遅れている。 薬用資源に非破壊的に文化財分析研究につき、測定装置施設の状況並びに専門性の高い技術操作法の修得後の研究員と共に進める研究計画がやや遅延しており、次年度計画で進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は以下の検討を予定している。 (A)本草学的視座に基づく生薬資料遺産の薬史学的価値並びに評価法の確立:前年度に引き続き、森野家、森野旧薬園所蔵の文書の翻刻を行い、松山本草収載植物との薬史学的価値をについて植物分類学的観点から比較解析を行う。H26年度春(4月~7月)に森野家・森野旧薬園・高知県立牧野植物園共催、農研機構・九州沖縄研究センター、奈良県等と連携し、生薬遺産の学術的意義や温故知新の示唆を具現化した特別展を当博物館で開催する。 (B)貴重資料標本の非破壊的鑑別法の開発:ICP-MS分析は微量だが材料を溶解する必要があり、文化財の分析には課題がある。そこで、非破壊元素分析法であるSEM-EDXを用いた蛍光X線分析法もしくはEPMA分析法を採用し、含有金属組成による産地判別法の精密化も行う。項目(A)と連動した対象文化財等の選定し、測定検体として使用可能な流通市場品を蒐集する。 (C)草木葉譜の修復・復元手法の構築:産地・材質・伝統的技術情報入手を目的とした現状調査と連携させた実用性重視の方法を検討する。本課題では、草木葉譜の修復・復元法に着手するが、H26年度は、和紙素材となる植物の基礎データ蓄積を目指す。 (D)自然遺産・森野旧薬園の復元・継承の基軸:前年度に引き続き、森野家、森野旧薬園、奈良県と連携し、栽培手法(栽培・育種・育苗)のマニュアル化として、蓄積した映像や・音声を編集し、篤農技術保存法を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
H25年度予定していた「貴重資料標本の非破壊的鑑別法の開発」並びに「国史跡・森野旧薬園所蔵の医療文化財修復」研究は当該施設間の手続き等の影響により、当初予定していた特任研究員の人件費の支出が遅れ、25年度の研究費に未使用額が生じたが、次年度に継続されるため、今年度行う予定の研究計画と併せて実施する。 研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。特に、H26年度の「貴重資料標本の非破壊的鑑別法の開発」並びに「国史跡・森野旧薬園所蔵の医療文化財修復」に関する研究実施の中心となる特任研究員の人件費として支出する。また、H26年度前期に史跡 森野旧薬園・高知県立牧野植物園共催、農研機構・九州沖縄研究センター、奈良県等と連携し、生薬遺産の学術的意義や温故知新の示唆を具現化した特別展を当博物館で開催する。更に「本草学の新展開」とする学術シンポジウム 「医・薬・理・農学の共創的連携:22世紀の薬草政策につなぐ今」を6月7日に大阪大学講堂にて開催する。
|