研究課題/領域番号 |
25282087
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山田 雄二 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (50344859)
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研究分担者 |
牧本 直樹 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (90242263)
後藤 順哉 中央大学, 理工学部, 教授 (40334031)
高嶋 隆太 東京理科大学, 理工学部, 講師 (50401138)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ファイナンス / エネルギー / ポートフォリオ / 市場リスク / 統合リスク管理 |
研究実績の概要 |
今年度は,当該研究テーマに関する理論的枠組みを発展させることを念頭に,①電力市場の予測・需給構造分析と容量市場の役割ついて検討した.さらに,②エネルギーポートフォリオ構築のためのポートフォリオ最適化手法と市場リスク評価手法について検討した. ①については,研究代表者山田を中心に, 電力価格をトレンドと残差系列に分解し,残差に対して多変量自己回帰モデルを当てはめた条件付き期待値予測手法を提案した.提案手法を日本卸電力取引所(JEPX)で取引されるスポット電力の実績データに対して適用したところ,高い精度の予測精度が確認され,実務上の有効性が示されるものとなった.また,約定量を入札総量で除した値を約定率と定義し,約定率に対して一般化加法モデルを当てはめることで,電力市場参加者にとって重要な情報を与える需要供給曲線を推定する枠組みを示した.なお,本結果については特許を申請中である.さらに,研究分担者後藤を中心に,需要・供給曲線の推定における要請の1つとして推定曲線に単調性を課す方法として,単調性制約付きGAMの定式化を行い,より現実的な需要・供給曲線が推定されるよう理論の拡張を行った.容量市場については,研究分担者高嶋を中心に分析を実施し, 容量市場の容量確保義務が小売事業者の戦略に対してヘッジとして機能し,期待利益を減少させる代わりにリスクを減少させ,売電価格も低下させるということが明らかになった. ②については,研究代表者後藤がロバスト最適化の不確実性集合の設定や,スプライン回帰手法などの正則化の亜種の適用などに関連した最適化手法について検討した.また,研究分担者牧本を中心に,米国株式市場を例に長期に渡る実証分析を実施したところ,モメンタムファクターが特にベアマーケットにおいて高いリターン予測力を持ち,運用実務で重要な役割を果たすことが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電力の効率的市場取引を見据えたエネルギー市場における統合リスクマネジメントシステム構築における,市場リスク,エネルギー,ポートフォリオの3つのサブテーマに関する研究は順調に進んでいる.また,電力市場分析,および関連するエネルギーポートフォリオの構築手法については,基礎となる数値最適化手法の応用,および基本分析をより実用的な実績データに対して適用する段階へと進捗しており,研究目的については,②おおむね順調に進展している,といえる.
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今後の研究の推進方策 |
電力市場の分析については,米国や欧州のデータに対して分析を実施し,各国における需給構造の分析や電源ポートフォリオの構築・シミュレーションを実施する予定である.ポートフォリオ最適化手法については,昨年,研究分担者後藤を中心として構築した手法のエネルギー資産に対する適用可能性について検討する.需要供給関数推定のための手法については,2次錐計画問題として定式化できる目途が立っているため,2015年度も継続して取り組み,論文としてまとめる予定である.さらに,市場リスクを考慮した統合リスクマネジメント手法についても,実データを用いたシミュレーションシステム実装の準備を行う.また,結果の普及のため,国内外での発表を積極的に行い,研究内容をさらに発展させていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
データベースを利用するにあたり、米国市場における電力価格のデータはWeb上で無償でダウンロード可能であるため、データベースの利用期間を一旦打ち切ることで予算削減を図った。また、次の契約期間を次年度とするため予算を繰り越すことで、予算の圧縮を行い、より効率的な予算執行を試みた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用予算については、前年度購入する予定だったデータベースを次年度とすることで、より効率的な予算執行を行う計画を立てている。データが利用可能になるまでの期間は無償で取得可能な別のデータを利用する、あるいはトライアルIDを利用してデータを取得するなどし、当初の計画から変更が生じないように研究を遂行する。さらに、今年度は、新たに取得したデータを利用して分析を実施していく予定である。
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