研究課題/領域番号 |
25282088
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
岩井 淳 群馬大学, 社会情報学部, 准教授 (60293081)
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研究分担者 |
富山 慶典 群馬大学, 社会情報学部, 教授 (50207627)
志田 基与師 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 教授 (90178872)
宇佐美 誠 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (80232809)
吉原 直毅 一橋大学, 経済研究所, 教授 (60272770)
猪原 健弘 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (80293075)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 社会的選択理論 / 情報学 / 厚生 / 幸福 / 匿名性 |
研究概要 |
社会的選択理論を情報学的に展開するソフトウェアシステムの設計と実装を行った。目標としたのは電子投票システムではなく,個々の社会的選択が伴う情報処理量を計量するシステムである。「入力」としての「社会的選択過程の定義」と「個人的選好の布置」に対して,対応する社会的選好そのものではなく,社会的選好を導出する過程で必要とする個人的選好情報の総量を集計することを意図した。平成25年度にはそのプロトタイプの設計と実装を終えることを目指し,おおむね予定通りの作業成果を得た。 具体的には,基礎理論として,アマルティア・センの社会的選択理論の枠組みを『集合的選択と社会的厚生』の数論を軸に共同確認する作業から開始した。その上で,<Shannonの自己情報量の総和として投票前と投票後の匿名水準を算出し,その差分により社会的選択過程が抽出した情報量を計測するアプローチ>を軸に,目標システムの基礎設計を行った。実装上は,当初予定した個別端末上で動作するシステムだけでなく,Web上でもほぼ同様に動作するシステムの構築も行った。プロトタイプとして,実装上主に用いた例題は単純多数決であった。他のより複雑な社会的選択手続きの実装が今後の課題となる。 研究開発の中で,数理的意思決定や電子民主主義論の成果との関連づけの問題を幅広く検討した。また,社会学(特にコミュニケーション論)上の問題設定との比較,社会的選択理論以後の民主制観の展開や正義論との関わりにおける論点,厚生経済学の展開に対する貢献等の面で,本研究を位置づけなおす議論を時間をかけて行った。9月には,社会情報学会の学会大会においてワークショップも開催し,同時点における知見を研究展望として共同発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標システムの設計と実装の作業がほぼ当初予定の通りに進んでいるため,このように判断する。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に続けて,1)社会的選択理論を情報学的に展開するソフトウェアシステムの設計と実装を進め,運用可能な水準のシステムとすることが第一の目標である。また,当初予定の通り,2) Capabilityアプローチの実現性の検討,3)プライバシー保護技術としての応用可能性の検討を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
早くから国内論文誌上での発表や書籍出版の機会に恵まれ,その準備に力を入れたため,結果的に国際会議発表等のための旅費の使用が少なくなる側面があった。しかし,こうした点は当初の想定以上に発表上の成果が得られたものとも位置づけられる。 研究自体は問題なく進展しており,国際会議発表等の旅費の使用もいずれ必要である。当初予定の通り,執行を進めていく。
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