研究課題/領域番号 |
25282089
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
田中 健一 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (90408724)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 数理最適化 / オペレーションズ・リサーチ / アルゴリズム / 都市・地域計画 / 施設配置問題 |
研究概要 |
施設におけるサービス提供を時空間領域で決定する,最大カバー型の最適配置問題(すでに構成済みの基本モデル)を土台とし,様々な拡張モデルを構成した.基本モデルでは,就業後の帰宅途中に施設に立ち寄り一定時間サービスを受ける就業者フローを需要と捉え,これを最大化する複数の施設の位置とサービス開始時刻を同時に決定する問題を扱った.基本モデルでは,施設におけるサービス利用後に,決められた時刻までに帰宅可能な場合に,サービスを利用可能であると定義していた. しかし実際には,帰宅可能な時刻が早いほど施設に立ち寄り易いと考えられる.これを表現するためにモデルを拡張し,帰宅時刻に応じて異なる重みをもつ複数のカバー水準を導入した.このモデルを現実の都市で検証するために,中京圏の鉄道網を対象とした通勤流動データを用い,鉄道駅に施設を配置する状況に対する最適解を分析した.その結果,早く帰宅できるフローに付与される重みを相対的に大きく設定する場合,施設におけるサービス開始時刻が早まる傾向があることが確認された.この成果は,日本オペレーションズ・リサーチ学会の英文論文に掲載された. また,他のモデル拡張の方向として,同一地点で複数回・複数種類のサービスを実施する場合について検討した.これは,映画館や英会話スクール等における映画や講義などのサービスに対応し,現実の多くの場面に現れる重要なモデルである.またデパートの閉店時間の見直しや公共図書館の夜間運営など,既存施設においてサービス提供の時間帯を最適化するための種々の問題についてモデル化を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本モデルの拡張については,順調に進められている.特に,施設サービスにアクセスした後,早く帰宅可能なフローほど大きな重みを付与したモデルでは,基本モデルでは記述できない新しい知見を得ることに成功した.また,その他にも重要な拡張モデルをすでに構成済みであり,これらを現実のデータに当てはめた実験を行う計画を立てている. 一方で,種々のモデルの拡張を行うことで,モデルが複雑かつ大規模になるため,数理最適化ソルバーで解くことができる問題は限られてくる.そのため,良質な解を高速に得るための発見的解法についていくつかの検討を行った.精度の良い解を得るためには,問題構造を捉えた工夫が必要であり,この点についてはさらなる検討が必要である.
|
今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進んでおり,初年度構成したいくつかの拡張モデルについて,具体的な例題に適用し,モデルの有用性の検証を行う.その際に,どの程度の規模の問題まで数理最適化ソルバーで解くことができるのかを見極め,現実の鉄道流動データを用いた大規模な問題については,必要に応じて発見的解法の適用を検討する. また,社会人大学院や保育施設,スポーツジムなどの具体的な施設を対象とし,サービスへのアクセス方法を検討することにより,個別の状況の特徴を捉えた新しいモデルの構成についても検討を行う. また,現実の問題への適用を検討するため,人の時空間行動データの利用や,各種サービスへの需要を把握するためのWebアンケートの実施などについても詳細に検討する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
残高はごく僅かであり,ほぼ当初計画どおりの使用である. 残高は旅費などの一部に当てる予定である.
|