研究課題/領域番号 |
25282095
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高橋 真吾 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20216724)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ブランドコミュニティ / ユーザーイノベーション / 情報伝播 / エージェントベースシミュレーション / エージェント / エージェントベースモデル |
研究実績の概要 |
Gianlucaは,企業と消費者が円滑に交流できる点で企業に注目されているブランド・コミュニティ(BC: Brand Community)の中から企業の求めるUIをするメンバーの特徴を明らかにした.そこでは,BCにおいてLUの特性をもつメンバーは「協力する意思」「ブランドの知識」「ブランドへの理解」がそれぞれ高い傾向にあると述べている. 本研究では,BCとNBCをモデル上で再現してBC内でのUI普及やニーズ伝播のダイナミクスを観察することを目的として,BC内の企業の求めるUIをするメンバーの特徴を本モデルのパラメーターに対応づけて,BCとNBCをモデル上で再現することができた. シナリオ分析の結果,BCにおいてUI活用手法は,従来の伝統的市場調査手法よりも有効であることがわかった.また,BCはメンバー同士の助け合いが多いため,コミュニティ内でのUI受容によるニーズ解決数が多く,UIによるニーズの解決速度が速いことがわかった.さらに,BCはNBCよりもコミュニティでのニーズの解決率が高いことからメンバーの満足度が高いコミュニティであることが明らかになった.以上のUI普及とニーズ伝播に関する知見は,小規模なファンの集団が複数集まり形成されるBCと企業の運営するような大規模な団体のBCにおいて,大規模な団体のBCの方がよりUIの普及率が高く,ニーズ解決速度も速いことがわかった. マーケター・マネジメント層への示唆:BCをどのように活用または運営するか,企業のマーケターやマネジメント層に対する示唆は以下のようになる. 企業の運営する大規模なBCはUIの普及率が高く,UIによってニーズ解決する速度が速いため,企業は自社の運営するBCからUIを抽出して製品開発を行い,ニーズ解決の遅い他のコミュニティや市場全体に製品を投入すると企業の製品販売数を増やすことができると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目的は,従来の市場調査の方法では実態が把握しがたいユーザーイノベーション現象のうち,とくに消費財のユーザーイノベーション現象に焦点をあて,ユーザーのコミュニティに注目したネットワーク構造をもつエージェントベースモデルを構築し,イノベーション現象にとって本質的なユーザー間の情報伝播を分析することであった。 本研究では,ブランドコミュニティの特徴をモデル化して,そこにおけるユーザー間の情報伝播を分析して,ニーズとその解決情報の伝播速度に関する一定の知見を得ることができた。これによりマネジメント層の意思決定支援に対する示唆を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
イノベーティングユーザーの情報伝播とコミュニティに関するシナリオ分析 これまで申請者らが社会シミュレーションにおける分析手法として開発してきたシナリオ分析の方法を用いてイノベーティングユーザーの情報伝播とコミュニティの相互作用について分析を深める。
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