研究課題/領域番号 |
25282096
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小野里 雅彦 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (80177279)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | がれき / シミュレーション / 物理シミュレーション / 3次元形状モデル / レスキュー活動支援 |
研究実績の概要 |
平成27年度においては,1.ディジタルがれきアーカイブの構築,2.レスキュー機器評価手法の開発,3.レスキュー隊員訓練支援環境の開発,の3つの研究項目を中心に研究を実施した. 最初の項目のディジタルがれきアーカイブの構築に関しては,木造家屋倒壊シミュレーションの高速化を行い,ソフトウェアの改良とマルチスレッド処理の導入により,約4倍の高速化を実現した.また,家屋モデルの定義ファイルの作成に関して,従来の3次元部材による定義法ではなく,ワイヤーフレーム構造による家屋構造の簡便な入力システムを新たに考案・開発し,従来の10分の1以下の時間で家屋モデルを定義可能とした.これによって,多様な構造の家屋を対象としたディジタルがれきアーカイブを容易に拡充することを可能とした. レスキュー機器評価手法の開発に関しては,角材を積み上げた模擬がれきフィールドの部材の積み上がり方を3次元計測するがれき計測システムの改良を行った.4方向に設置されたデプスカメラで計測された点群データの統合を行い,がれき部材の3次元抽出を高速に行うシステムの開発を行った.このシステムを用いることで,レスキューロボットの走行によるがれきへの影響を定量的に評価することが可能となる. 最後のレスキュー隊員訓練支援環境の開発に関しては,大型ディスプレイによる3次元ディジタルがれき内のウォークスルーや,ハプティックデバイスによるディジタルがれきモデルの探査などを可能とした.この課題に関しては,ユーザインターフェースの分野を中心に新しい技術が次々と生まれており,それらを取り込んだ効果的なユーザインタフェースの方式を策定した. こうした研究成果を招待講演や学会発表を行うとともに,講演資料をresearchmapで資料登録するなどして,研究成果の公表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題申請時に計画していた研究項目は期待される内容を概ね達成できたと考える.計画当初には想定していなかった技術や製品が研究期間中に現れたことで,発展的な研究内容を追加拡充して実施することを計画した.その実施のため,本研究課題の補助事業期間を1年延長することを願い出て認められている. 拡充のおおきな点としては,人体の位置・姿勢を細かくリアルタイムに取得できるデバイスが安価に入手可能となったことで,レスキュー隊員の体感的教育支援が実現可能となったことである.ディジタルの世界に構築される各種の木造倒壊がれきモデルを高いリアリティをもって現場で救出活動を行う隊員に提示できるユーザインタフェースの機能向上を達成すべき追加項目と考えた. また,物理シミュレーションを高速に実行するためのGPU利用に関しても新たな技術が登場してきており,それを用いることでさらなる高速化と大規模化がはれると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
コンピュータ内に蓄積される倒壊木造家屋のがれきに高い臨場感を持って入っていけるユーザインタフェースの提案とプロトタイプシステムの構築を行うとともに,普及が進むGPUを活用した倒壊シミュレーションの改良による,処理の大規模化,高速化を行う. 前者に関しては全身(手指を含む)の動きを取得できるモーションキャプチャデバイスの利用を中心に研究開発を進める.後者は物理エンジンPhysXの開発元の米国NVIDIA社の開発担当者と連絡をとり,剛体シミュレーションのGPU対応の新しいシステム実装を行っていく. これらの研究成果は学会発表に加えて,様々な場での公開を勧め,さらに開発したソフトウェアと蓄積したディジタルがれきアーカイブの公開(一部)へと進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では平成27年度で等研究課題は終了する予定であったが,関連する分野(ユーザインタフェースと物理エンジンのGPU利用)において大きな技術的進歩があり,その成果を取り込むことによって,本研究課題の目的とするレスキュー活動の訓練支援により効果的な成果を得ることができると考え,1年間の研究期間延長を申請し認められた.この延長期間での研究活動のため,物品費,旅費の節約等により,70万円を次年度使用額として残した.
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次年度使用額の使用計画 |
コンピュータ周辺機器,記憶メディア,プリンタ消耗品等の物品費に120,000円,横浜(ROBOMECH 2016)ならびにスイス(SSRR 2016)で開催される会議への成果発表の旅費に380,000円,ソフトウェア開発補助ならびにデータ準備・モデル編集のアルバイト雇用の人件費に120,000円,会議参加登録料などのその他の経費で80,000円を合計700,000円の内訳として計画している.
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