研究課題/領域番号 |
25282097
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
三宅 淳巳 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 教授 (60174140)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 新エネルギー / リスク解析 / リスクトレードオフ |
研究実績の概要 |
本研究では,化石燃料枯渇に伴う代替エネルギー需要ならびに東日本大震災に伴い急速に進行する脱原発の流れの中で,エネルギー源としての需要増加が見込まれているジメチルエーテル(DME),圧縮天然ガス(CNG),バイオマス燃料の各インフラシステムの有するリスクに関し,トラブルの発生,進展に関するシナリオの抽出,リスクの推定を行い,従来システムとのリスク比較を実施することにより,エネルギー転換に際してのリスクトレードオフに関する検討を行う。 これにより,従来型のエネルギーインフラから代替/再生可能エネルギーに転換する際のリスクならびに社会受容(Public Acceptance)の検討が可能となることから,我が国の復興に向けたエネルギーの安定供給ならびに事業の安定かつ健全な継続計画(BCP)策定を通じて,安全・安心かつ持続的社会の構築に資する情報を発信することを目的としている。 これまでの研究により,代替エネルギーとしてジメチルエーエル(DME),圧縮天然ガス(CNG)および液化天然ガス(LNG)の各システムを,新エネルギーとしては再生可能エネルギーであるバイオマスをとりあげてそれらのプロセスについてリスク分析を行い,化石燃料,原子力によるエネルギーとのリスクトレードオフ分析を行った。LNGについてはオンショア(陸上)施設のモジュール化工法を,バイオマスについては木質系バイオマスによる液体燃料化プロセスをそれぞれ提案し,最適化設計を行って分析を行った。さらに,その結果を基に,社会受容(Public Acceptance)について検討を行うことにより,新時代におけるエネルギー政策策定の資料とするとともに,各要素技術の深化と展開により,安全・安心イノベーションにつながる技術と方法論の創出を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究により,化石燃料の代替エネルギーとしてジメチルエーエル(DME),圧縮天然ガス(CNG)および液化天然ガス(LNG)の各システムを,新エネルギーとしては再生可能エネルギーであるバイオマスをとりあげてそれらのプロセスについてリスク分析を行い,化石燃料,原子力によるエネルギーとのリスクトレードオフ分析を行った。LNGについてはオンショア(陸上)施設のモジュール化工法を,バイオマスについては木質系バイオマスによる液体燃料化プロセスをそれぞれ提案し,最適化設計を行って分析を行った。一方,水素ステーションのリスク評価を行い,法改正につながる技術情報を発信した。 以上の設備に関する基礎情報については,関係業界団体(高圧ガス保安協会,石油連盟,石油産業活性化センター,日本ガス協会等)ならびに関係企業担当者や研究機関等のヒヤリングや施設見学によってプロセスモデルを構築し,典型的な稼働状況におけるリスク分析/評価を行った。 これらの成果は当初の研究目的に対し順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる平成27年度は,初年度および2年度目に実施したリスク評価の結果を基に,リスクトレードオフ分析を行う。リスクトレードオフとは,注目しているあるリスクを低減しようとすると,別のリスクが増加する関係のことである。すなわち,注目しているシステムのリスクをどれだけ適切に評価し,コントロールできているかがきわめて重要になる。この場合,発生可能なシナリオの網羅的な抽出が最大の鍵である。 そこで,各システムの有するリスク顕在化シナリオのうち,そのシステム特有かつ主要なシナリオについて リスク比較を実施し,石油ならびに原子力施設とのトレードオフについて検討する。比較項目は,各システムの有するエネルギー供給能力,適用可能性,システム導入によるトータルコストに対する地域住民の健康ならびに環境に及ぼすリスクである。各システムのトータルリスクの検討には,右図のようなシステムライフサイクルを考慮したモデルを用いる。 一方,各システムのリスク比較にあたり,これらを統一的に表現する指標(共通尺度)の提案を行い,各地域特性に合致したエネルギーシステム導入についての考え方を示し,具体的な選定方法,選択手順に関する指針を提案する。ここでは,地域住民,社会の受容性に関する検討も不可欠である。地域特性として,地形,人口動態,経済性,避難環境負荷等も項目としてあげられるが,これらの項目は調査検討の中で絞り込んでいく。最終的なリスクトレードオフはリスクマトリクスによって一覧性をもって示される。各項目に対する各システムの評価を基に,各地域におけるシステム導入の選定に活用できるマトリクスとなり,導入検討者らの優先順位に従って検討するための基礎資料提供が可能になるとともに,より一般性を有したリスク検討ための指針となることが期待できる。
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