研究課題/領域番号 |
25282100
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
森 保宏 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30262877)
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研究分担者 |
小川 克郎 名古屋大学, 環境学研究科, 名誉教授 (40262844)
加藤 悟 名古屋産業大学, 環境情報学部, 准教授 (40323539)
菅井 径世 名古屋産業大学, 環境情報学部, 教授 (50235850)
廣内 大助 信州大学, 教育学部, 教授 (50424916)
正木 和明 愛知工業大学, 工学部, 教授 (90078915)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 安心の社会技術 / 地震ハザード / 地震リスク評価 |
研究実績の概要 |
助成研究2年目において,ボーリング地点で推定される地震動強さを元に,空間補間により建物ごとに地震動強さを評価誤差とともに推定する,空間統計解析及び空間補間推定のための基礎プログラムを開発し,その成果を学術論文として公表した。加えて,このプログラムを活用するために,250mメッシュ単位で得られることが多い工学的基盤における地震波からボーリング地点における工学的基盤における地震波を推定するプログラム,および,工学地盤から表層までの地震波の解析プログラムを作成した。 また,模擬地震波群を用いた木造住宅の時刻歴応答解析結果より,地動最大速度を地震動強さの指標として,耐震診断指標で表される建物強さも考慮した被害率曲線を,地盤種別・地震規模ごとに作成し,阪神・淡路大震災における調査結果と比較検討して,その妥当性を確認した。この研究成果は,研究集会で公表したほか,現在,学術論文として投稿中である。 同時に,研究助成初年度に合意に達した尾張旭市との協働作業として,同市が平成26年度に実施する地震ハザードマップ作成と被害想定に対して本研究で開発したシステムを提供し,愛知県の協力を得て入手した,東海・東南海2連動,3連動,南海トラフ巨大地震(3種類),高浜-猿投断層といった想定地震の工学的基盤における地震波を用いて,建物ごと,50mメッシュ毎,計測震度,PGA,PGVなどの6種の地震動強さと死亡確率・全壊確率・半壊確率の3種のリスクを推定した。 申請者らは,近年のIT技術の発達と普及に着目し,初年度には高精度でありながら安価な地震計の開発を完了し,市行政と市民の協力を得て,尾張旭市内の地表4か所(個人住宅1か所,福祉施設等3か所)に設置したが,今年度は,さらに,個人住宅10ヵ所に設置した。これまで震度2程度の地震波形を3回計測しており,分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
250mメッシュ単位で得られることが多い工学的基盤における地震波からボーリング地点における工学的基盤における地震波を推定するプログラム,工学地盤から表層までの地震波の解析プログラム,および,空間統計解析及び空間補間推定のための基礎プログラムの開発を完了した。また,模擬地震波群を用いた木造住宅の時刻歴応答解析結果より,地動最大速度を地震動強さの指標として,耐震診断指標で表される建物強さも考慮した被害率曲線を,地盤種別・地震規模ごとに作成したことから,主目的である建物ごとの地震ハザードマップ作成と被害想定のためのシステムの骨格はほぼ完成したといえる。 研究助成初年度に収集したボーリングデータを追加し,本研究で開発したシステムと愛知県の協力を得て入手した東海・東南海2連動,3連動,南海トラフ巨大地震(3種類),高浜-猿投断層といった想定地震の工学的基盤における地震波を用いて,尾張旭市における建物ごと,50mメッシュ毎,計測震度,PGA,PGVなどの6種の地震動強さと死亡確率・全壊確率・半壊確率の3種のリスクを推定し,実用化も達成した。 本システムが提供する地震ハザードの評価精度は,地震計による観測結果との比較検討が重要であるが,初年度に開発した高精度でありながら安価な地震計を個人住宅10ヵ所に追加設置し,これまでに震度2程度の地震波形を3回ほど計測しており,解析が遅れてはいるものの,キャリブレーションを行うための情報は整いつつある。 以上のとおり,3年計画の研究において開始から2年が経過したが,研究開始当初から対象都市である尾張旭市行政と市民との協働作業を非常に良好に,かつ順調に進めており,また,多数設置した地震計での観測記録も得られていることから,現在までの研究の達成度は,当初の予定より高いものとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
・本年度は,尾張旭市とは地盤条件の大きく異なる地域に6台の高精度・低価格地震計を設置する予定であり,これまで観測された地震記録とあわせて活用した地震動推定の統計的キャリブレーションシステムを開発する。 ・地震計については,さらに高精度,利便性の高い地震計の開発に向けて協力メーカーと研究打ち合わせを開始しており,高精度,低価格の地震計の製造のみでなく,設置,通信に関しても検討する予定である。 ・昨年度に地震ハザード評価および被害推定を行った尾張旭市では,今後も継続的に住宅の新築,建替え・改修,市民の出生・死亡,新規のボーリングデータといった情報の追加・更新を行い,常にハザード,被害想定を最新のものとする予定である。こうした動きに対応して,地震観測データも含め,システマチックなデータベースの維持管理システムの構築に関する研究を進める。 ・住宅所有者の耐震改修への意思決定を支援する「耐震改修による地震リスクの低減効果評価システム」を構築し,尾張旭市のHP上に公開する予定であり,これを見据えて研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
さらに高精度,利便性の高い地震計の開発が少し遅れていること。建物ごとの地震ハザード評価精度の向上に関する論文の投稿を計画しているが,カラー印刷となることから,投稿料が高額となること。海外での国際会議を含め,複数の学会での研究発表を計画しており,そのための旅費および参加費が必要なこと
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次年度使用額の使用計画 |
地震計の購入設置:30万円,学術論文の投稿料:25万円,学会発表のための旅費:70万円,その他の旅費(打合せなど):10万円,消耗品など:46万円,謝金など:25万円
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