研究課題/領域番号 |
25282107
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
石垣 泰輔 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (70144392)
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研究分担者 |
島田 広昭 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (20067763)
馬場 康之 京都大学, 防災研究所, 准教授 (30283675)
武藤 裕則 徳島大学, 大学院ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (40263157)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 南海トラフ地震 / 津波避難 / 海岸利用者 |
研究実績の概要 |
(1)海水浴場の津波対策・避難計画のレビュー:南海トラフ地震津波の来襲が予測される24都府県の海水浴場を管理する自治体および管理団体(合計516団体)を対象に津波防災対策と管理体制に関するアンケート調査を行い、197団体からアンケート結果を回収した。その結果、管理体制では責任者だけでなく管理者全員の津波防災に関する知識や意識の向上を図る必要があること、多くの海水浴場では避難マニュアルやハザードマップの作成など津波避難計画を確立させる必要があることが分かり、結果をまとめて土木学会論文集B3(海洋開発)に投稿中である。 (2)海水浴場利用者の津波防災意識調査および分析:2014年7月26日~27日に三重県の阿児の松原海水浴場の利用者228人を対象にアンケート調査を実施した。東日本大震災以前の2009年7月調査(270人)および震災後の2012年7月調査(309人)の結果と比較して津波防災意識の変化を検討した。その結果、前年度に実施した和歌山県の白良浜海水浴場での結果と同様に、震災後には防災意識の高まりはあったが、3年後の2014年の調査では震災前の2009年の結果と同様の意識レベルに低下していたことが知れた。また、2014年8月30日に大阪府の淡輪海水浴場の利用者(226人)を、8月26日に兵庫県の須磨海水浴場でもアンケート調査を実施した。 (3)避難訓練のビデオ撮影および参加者の行動分析:2014年7月27日に三重県の阿児の松原海水浴場で実施された避難訓練のビデオ撮影を行った。この結果と2013年8月4日の避難訓練撮影ビデオを用い、海中、砂浜、護岸から避難する人の歩行速度を運動解析ソフトを用いて求めた。その結果を用い、避難行動シミュレーションに用いる歩行速度データを得た。これらのデータを用い、阿児の松原海水浴場を対象に、津波来襲時の避難行動シミュレーションを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)海水浴場の津波対策・避難計画のレビュー:25年度の達成度が不十分であったが、海水浴場管理者へのアンケート結果をまとめ、土木学会論文集B3(海洋開発)に投稿できたことから、計画を達成できたと判断している。 (2)海水浴場利用者の津波防災意識調査および分析:研究計画のとおり、三重県:阿児の松原海水浴場、大阪府:淡輪海水浴場、兵庫県:須磨海水浴場を対象に津波防災意識に関するアンケート調査を実施することができた。その結果、東日本大震災前後の津波意識の変化を分析することができるデータを得られ、震災前の既存データとの分析を行っており、ほぼ計画が達成できた。 (3)避難訓練のビデオ撮影および参加者の行動分析:計画どおり、三重県志摩市の阿児の松原海水浴場で2014年7月26日に実施された避難訓練を撮影し、参加者の歩行速度等の行動分析を実施した。その結果と2013年8月の結果を、避難行動シミュレーションに適用できたことで研究計画は達成された。 以上のように、計画はほぼ達成され、1編の査読付き論文を投稿できたが、未投稿の成果も残っているため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、平成26年度の成果を活用するとともに、以下のように研究を進めて行く。 (1)海水浴場利用者の津波防災意識調査および分析:和歌山県の白良浜海水浴場の利用者を対象とした津波防災意識調査を実施し、東日本大震災からの防災意識の経年変化の分析を行う。 (2)津波来襲時の避難行動シミュレーション:阿児の松原海水浴場を対象とした避難行動シミュレーションモデルを、白良浜海水浴場に適用し、早期安全避難に関する検討を行う。 (3)海水浴場利用者の津波来襲時安全避難対応策への提言:南海トラフ地震津波の来襲が予測される24都府県の海水浴場の管理者を対象に実施してアンケートと調査結果と、東日本大震災前の2007年調査データを用い、海水浴場利用者、特に他地域からの来訪者への情報伝達方法、避難行動を促す対応策、安全な避難経路の設定、避難指示および避難標識の設置場所や設置方法など安全避難を実行するための対応策について整理し、提言すべき事項を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の次年度使用額2557円は、物品費に残額が生じたためである。また、徳島大学の分担者の次年度使用額375934円については、徳島県を含む四国地方では、本研究の調査対象地区周辺を含めて甚大な被害が発生したため、分担者がその調査に多大の時間と労力を費やせざるを得なかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
研究代表者の次年度使用額2557円は、物品費に加算し、平成27年度の基金の物品費を52557円する。徳島大学の研究分担者の次年度使用額375934円は、物品費に175934円を加算して27年度は275934円、旅費に100000円加算して27年度の旅費を200000円とし、残りの100000円を謝金として使用する。これらの次年度使用額と平成27年度の補助金を合わせ、津波防災意識調査とその分析に必要な物品費に528491円、研究打ち合わせおよび津波防災意識調査を実施するための旅費に800000円、意識調査およびその分析およびデータベース構築の補助や避難行動シミュレーションモデルの構築および解析の補助のための謝金に800000円、成果の印刷のためとしてその他に50000円の合計2178491円を使用する。
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