研究課題/領域番号 |
25282112
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
岡村 眞 高知大学, 総合研究センター, 特任教授 (10112385)
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研究分担者 |
松岡 裕美 高知大学, 自然科学系, 准教授 (60222296)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 南海トラフ地震 / 津波堆積物 / 古地震 / 地震履歴 |
研究実績の概要 |
本年度は高知県土佐市の蟹ヶ池と須崎市のただす池において、これまでに明らかになっている津波イベントの年代の再検討を行った。さらに、紀伊半島東岸の三重県度会郡大紀町の芦浜池と南伊勢町の座佐池においても調査を進めた。 芦浜池では過去約2300年間の津波履歴を明らかにし、顕著なイベントを2回確認した。上位のイベントは西暦900~1100年の年代値を示すことから仁和地震に相当すると考えられ、下位のイベントは2300~2000 yBPの年代値を持つ。それ以外にも小さなイベントが数回見られるが、歴史記録に残る過去1000年程度の地震による津波は、仁和地震を除いて、この池に大きな痕跡を残していない。座佐池においては、浜堤の人工的な土砂採取により過去300年間程度が解析不可能となっているが、それ以前から7200 yBPまでの堆積物記録が残されており、6回のイベントを確認している。6回のイベントのなかでも2300~2000 yBPのイベントは粗い粒度と厚い層厚を示し、明らかに規模が大きい。 同じ紀伊半島東岸の尾鷲市須賀利大池では2150~2300yBP、四国東端の蒲生田大池では2050~2300 yBPにやはり大規模なイベントが確認できており、これらの結果から、約2000年前に四国から紀伊半島にかけての地域で大規模なイベントが発生しており、それは過去数千年間で一回という頻度のイベントであることが明らかになった。現在再検討を進めているただす池や蟹ヶ池の結果と合わせて、約2000年前に何が起こったのか、明らかにしたい。 さらに、座佐池ではアカホヤ火山灰層と、その直下に鬼界カルデラの噴火に伴う津波によってもたらされた可能性が高い砂礫層が確認できた。これはイベントとしては、上位の南海トラフ地震の津波によると思われるどのイベントよりも大規模なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
芦浜池と座佐池において、いずれも過去数千年間の津波履歴を得ることができたことから、当初の計画以上に進展したと判断できる。特に座佐池では、南海トラフ沿岸湖沼では最も長い過去約7000年間の津波履歴を解明することができた。これはあらかじめ計画して可能なことではないが、幸運は誰にでも訪れるわけではない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題は、これまでの結果をまとめることである。 さらに、紀伊半島東岸には、まだいくつかの津波堆積物の研究に適した池が残されているので、それをひとつづつ調査することと、これまでの研究成果を見直しさらに履歴解明の精度をあげることを継続する。そして南海トラフ沿岸における過去数千年間の津波履歴を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
金額が小さく中途半端なため、無理して使用するよりも次年度にまとめて使用した方が有効であると考えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度分と合わせて調査用器機の購入に使用したい。
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