研究課題/領域番号 |
25282118
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北野 哲司 名古屋大学, 減災連携研究センター, 寄附研究部門教授 (90644849)
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研究分担者 |
片桐 信 摂南大学, 理工学部, 教授 (10554412)
野中 俊宏 名古屋大学, 減災連携研究センター, 寄附研究部門助教 (40644852)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 埋設管路 / ライフライン / 数値解析 / 防災・減災 / 地震工学 / 液状化地盤 / メカニカル継手 |
研究実績の概要 |
1.地中スラストブロックの動的挙動がメカニカル継手埋設管に与える影響評価: 東北地方太平洋沖地震では、水道送水管路においてスラストブロックが変動し、埋設管に座屈や抜け出し等が発生した。スラストブロックの周辺のメカニカル継手埋設管からの漏水が起きた原因は、地震時に周辺地盤とスラストブロックとが独立して振動・挙動したため、スラストブロックの動的変位の影響を受けメカニカル継手が漏水したと考える。そこで、上記を想定したスラストブロックの地震時の挙動をFEM-DEM結合解析手法を用いてケーススタディー(地盤モデル形状、破壊面の減衰定数)を実施し、スラストブロック間に連結されるメカニカル継手埋設管への影響を評価した。 2.ソリッド-シェル解析を用いた周方向地盤ばね特性の詳細検討: 実務で埋設管の耐震性評価解析を実施する場合、埋設管を『シェル要素』で、その周辺に存在する地盤を『地盤ばね要素』でモデル化している。本研究で実施したソリッド-シェル解析結果から、埋設管に作用する土圧は、周方向で異なることが確認された。そこで、周方向に配置する地盤ばねの強度特性を明らかにすると共に、設計で用いることができる設定方法を提案した。 3.メカニカル継手埋設管の液状化被害対策工法の開発: 平成25年度の研究成果として、東北地方太平洋沖地震、兵庫県南部地震におけるメカニカル継手埋設管の被害は、面的に広がる液状化現象が発生した地盤、或いは、急傾斜地・丘陵地における斜面での表層土が滑動した地盤で発生していることが多いことが確認された。そこで、メカニカル継手埋設管の液状化被害対策について、弾塑性構成式(SYSカムクレイモデル)を搭載した水~土骨格連成有限変形解析手法を用いて、埋設管と並行にドレーン材を配置することを考え、ドレーン材の設置長さについてケーススタディーを行い、効果的な対策工法を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、次の研究成果を挙げている。①レーザー航空測量から得られる5mメッシュ標高値を用いて、液状化現象の発生確率が高い微地形の位置を直接把握でき手法を提示した。また、その成果を濃尾平野に適用した。②ソリッド-シェル解析手法の確立では、本解析手法を用いて既往の実験結果を再現することができた。また、確立した解析手法を用いて、管周方向の地盤反力(土圧)を把握すると共に、管周方向に異なる地盤ばね特性設定値を提案した。③メカニカル継手埋設管の液状化被害対策工法の開発として、弾塑性構成式(SYSカムクレイモデル)を搭載した水~土骨格連成有限変形解析手法を用いて、埋設管と並行にドレーン材を配置することを考え、ドレーン材の設置長さについてケーススタディーを行い、効果的な対策工法を提案した。 今後の課題としては、次の通りである。①スラストブロックの地震時の挙動をFEM-DEM結合解析手法を用いてケーススタディーを実施し、スラストブロック間に連結されるメカニカル継手埋設管への影響を更に評価していく。②メカニカル継手の破断メカニズムを明確にするため、メカニカル継手の構成部品、鋳鉄管本体をモデル化し、引張変位・圧縮変位を与えて各部品の変形状況や抜出し過程を解析する。③本研究の総まとめとして、これまでの研究成果を濃尾平野に適用する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成27年度は、下記の課題に取り組み、各研究課題を収斂させていく。 1.地中スラストブロックの動的挙動がメカニカル継手埋設管に与える影響評価: 東北地方太平洋沖地震では、水道送水管路においてスラストブロックが変動し、埋設管に座屈や抜出し等が発生した。スラストブロックの周辺のメカニカル継手埋設管からの漏水が起きた原因は、地震時に周辺地盤とスラストブロックとが独立して振動・挙動したため、スラストブロックの動的変位の影響を受けメカニカル継手が漏水したと推定している。そこで、FEM-DEM結合解析手法を用いて、スラストブロックの地震時の挙動についてケーススタディーを実施することによって、スラストブロック間に連結されるメカニカル継手埋設管への影響を評価する。 2.地震時におけるメカニカル継手の破断メカニズム解明に向けた構成要素解析: 既往の大規模地震では、メカニカル継手に圧縮変位や引張変位が作用することによって、継手を構成している種々部品が変形・破断し、最終的には抜出し被害に至る。そこで、この被害プロセスを解析的に解明していくため、メカニカル継手を構成する種々の部品をモデル化し、引張・圧縮変位を作用させ各部品の変形挙動を把握する。なお、本課題は、地震時被害予測への適用以外に、継手の耐震補強工法の開発、更には導管ネット―ワークへの適用等、広範な検討への活用が期待される課題でもある。 3.これまでの研究成果の濃尾平野への適用: 本研究の総まとめとして、これまでの研究成果を濃尾平野に適用する。具体的には、メカニカル継手の抜出し被害は、激しく液状化する地盤で発生していることが、本研究成果から明らかになった。そこで、地理情報システムを用いて、微地形分類、地盤強度、振動特性、埋立履歴等と導管ネットワークを重ね合わせ、抜出し被害が発生し得る可能性がある地域を明らかにしていく計画である。
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