研究課題/領域番号 |
25282130
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林田 祐樹 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10381005)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 生物・生体工学 / ナノ材料 / 神経電極 |
研究概要 |
本研究は,これまで我々が開発してきた神経用途カーボンナノチューブ(CNT)バンドル電極を,移植用途の仕様に合わせて改良開発し,その有用性を in-vivo神経組織を用いた生理学実験等により評価・検証することである。交付申請書記載の実施計画に沿って,1年目となる本年度は,まず比較的長針の電極を作製するうえでの安定性/再現性を向上させるため,その工程・装置について改良を行った。高倍率デジタル顕微鏡を新規に導入し,①CNTのバンドル形成,②シリコーンエラストマーによる被覆膜形成,③電極の先端加工の各過程をリアルタイムで観察可能とし,各々の条件パラメータの調整を容易にした。さらに上記①において重要と考えられた低湿環境をつくるため,顕微鏡や装置等を設置した防振台の周囲を覆う簡易式の除湿クリーンベンチを設計・製作した。以上を通じて,0.2-0.3 mm長のCNTバンドルの作成については再現性の向上が認められた。但し,0.5 mm以上の長さのものについては再現性が期待より低く,その要因として,上記①に用いるCNT分散液のサンプル間にバラつきが大きいことが考えれられた。これについては,CNTの入手および分散液調整の方法に立ち戻り,今後さらに検討を続けることとした。続いて,作製した電極の機械的強度/柔軟性について,脳組織の硬度を模擬したアガロースゲル内への電極刺入試験により評価した。その結果,長さ0.2-0.6 mm,先端径3-20 μmのCNTバンドル電極については,神経組織内への刺入に耐える十分な強度を持つことが示唆された。比較的高速の刺入(数百μm/sec)では,CNTバンドル部が屈曲する場合もあったが,10回以上の繰り返し刺入,および刺入した状態で軸垂直方向へのズレ負荷を与えた場合でも殆ど可塑変形しないことが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度前半は,これまで大きな問題となっていなかったCNT分散液の安定性が著しく悪く(原因は調査中),またサンプル間のバラつきも非常に大きかった。そのため,CNTバンドルの電着形成の再現性が当初悪化してしまい,その後の計画が遅れてしまった。結果として,交付申請書に実施計画の一部として記載していた,“作製電極の電気化学的特性評価”を十分に実施できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで使用していた市販CNTの製造会社とは別の入手先を検討し,また場合によっては,CNTの原末ではなく,分散液の状態のものを入手・試用する。CNTバンドル形成の再現性向上は期待以下ではあったが,サブミリメートル長の電極作製の改良開発においては一定の成果があった。そこで,本年度に十分な実施ができなかった項目を含め,計画を遂行していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
「現在までの達成度」に記載の通り,当初の実施計画から遅れが生じ,交付申請書の計画として記載していた項目の一部を十分に実施できなかったため。 本年度に十分な実施ができなかった項目の遂行に充てる。
|