研究課題/領域番号 |
25282132
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中野 元博 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40164256)
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研究分担者 |
押鐘 寧 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40263206)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 放射線技術工学 / 水の窓軟X線顕微鏡 / 放電生成プラズマ / キャピラリ |
研究実績の概要 |
水の窓領域で反射率が高いガラスのキャピラリでパルス放電生成プラズマから放射される軟X線を集束し、生きている細胞内小器官で起きている動的な変化を観察可能にする顕微法を開発するため、軟X線顕微鏡用小型プロトタイプ光源を製作した。キャピラリを用いて大気圧下に取り出した軟X線の出力を計測するAXUVシリコンフォトダイオード検出器の校正を、大阪大学レーザーエネルギー学研究センターのEUV Database装置付属の軟X線分光器を用いて行った。プラズマ生成材料として選んだ炭素(C)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)に対して放射スペクトルを測定し、AlとMylarの薄膜フィルターを透過する波長7nm以下と波長域2.28~4.36 nmの水の窓領域の軟X線スペクトル分布から校正データを取得した。電極間電圧が約6kVのシングルキャピラリを用いた実験で、炭素(C)とジルコニウム(Zr)のターゲットに対して放電生成プラズマからの軟X線を大気圧下で計測した結果、パルス放電のみでは出力が小さいので、パルスレーザーアシスト放電により軟X線を計測すると、レーザーのみを用いた場合に比較して放電との複合により出力が向上したが、生体細胞内の小器官を観察するには不十分であった。そこで、電極をモリブデン(Mo)へ変更し、アシスト用レーザーとのパルス同期を制御して出力の向上を図った。さらに放電ノイズを低減するため、対向電極のシールド構造やキャピラリ等のオプティクスを変更し、最終年度に水分を含む環境下で生きている細胞内の小器官の観察が可能な小型軟X線光源開発の可能性を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度に設計・製作したパルス放電を用いた小型プロトタイプ光源装置で得られた水の窓軟X線の出力が小さく、本年度はターゲット材料を再検討して向上に努めたが、放電ノイズの重畳が問題となり、光源装置の改良が必要となった。そこで、放電回路と電極、および、キャピラリの構造を変更して出力の向上を図っているため、当初の計画より顕微観察法の開発が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
水の窓軟X線顕微鏡用小型プロトタイプ光源装置の放電回路と電極の構造を変更し、その諸性能を評価する。放電ノイズ低減のために電極部のシールドを徹底し、キャピラリとの間に硬X線ノイズ除去用の第1反射鏡を設置して軟X線信号出力を向上させ、水の窓軟X線顕微鏡用光源を開発していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
耐震補強工事のための二度の実験室移転作業で小型プロトタイプ光源の現装置の製作が遅れ、シングルキャピラリを用いた実験に重点を置いて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行額が異なってしまった。さらに、放電ノイズの重畳が問題となり、その解決のために光源装置の再設計が必要となった。その改良のために必要な費用を学術研究助成基金助成金の中で繰り越して、再設計した改良装置を製作し、当初の計画と併せて水の窓軟X線顕微鏡用光源装置の開発を進めていくことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
現装置で放電ノイズの重畳が特に問題となり、電磁シールド等を改良した光源装置の再製作を実施する。小型プロトタイプ光源装置の放電回路と電極の構造を変更した設計であらたに製作した改良装置を用いて、その諸性能を評価する。放電ノイズ低減のため、電極部の電磁シールドを徹底し、キャピラリとの間に硬X線ノイズ除去用の第1反射鏡を設置して軟X線信号出力を向上させ、水の窓軟X線顕微鏡用の光源装置としての性能を高め、水分を含む環境下で生きている細胞内の小器官の観察が可能な小型軟X線光源実現の可能性を示す。
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