研究課題/領域番号 |
25282137
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
牧川 方昭 立命館大学, 理工学部, 教授 (70157163)
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研究分担者 |
塩澤 成弘 立命館大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (30411250)
岡田 志麻 近畿大学, 理工学部, 講師 (40551560)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生体内電気信号 / 電極 / 分圧抵抗 / 高速スイッチング / 脳波 / 心電図 / 下肢のむくみ / 信号源の大きさ |
研究実績の概要 |
生体内電気信号の計測電極とグラウンド電極の間に設置した分圧抵抗値を切り替えることによって、信号源の電圧とその深さに関する情報を取り出すことができる、分圧抵抗の高速スイッチングによる脳深部電気活動の3次元計測装置を開発している.研究2年度の研究項目は、1)電気信号の3次元分布の推定法の開発、2)グラウンド位置の高速切り替えによる体内電気信号分布断層計測精度の向上の2項目である. 項目1)に関しては、当初計画では従来の研究同様、生体内電気信号源の大きさは持たないとしていたが、信号源のポテンシャル、位置、向き、大きさの4つを考慮しなければならないことが明らかとなったため、項目2)のグラウンドの設置方法も含め、この4つを推定できる理論を考案した.この理論では、空間内の任意の2点に信号源の正極と負極を設置し、信号源で各々の電圧を示し、離れた地点で0電位を示すようなラプラスの条件を満たす空間内のポテンシャル分布を考案した.また、テブナンの定理に従って得た内部抵抗と組み合わせることによって、生体内電気信号源までの抵抗値を推定できることを示した.水槽実験によって、以上の信号源位置の推定方法の検証を行った結果、正負電極間距離20mmに対して、10mm離れた信号電極での計測電圧データから、前後方向0.8mm.左右方向0.3mmの精度で位置が推定できることが明らかとなった. また、本手法の応用として、下肢のむくみの計測を試みた.従来の電流を流す方法と異なり、筋電図を利用することによって、むくみに伴う細胞外液量を正確に計測できる低周波領域での計測が可能となる.計測の結果、下肢のむくみを正確に計測できることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度積み残した20チャンネルを想定の電極に対する高速分圧抵抗スイッチング計測システムの開発に関しては、必要台数の製作を完了し、現在、脳波計測実験を実施しつつある.その中で、信号源の大きさを考慮しなければならないとの問題点が明らかとなった.そのため、当初の計画に加えるに、信号源のポテンシャル、位置、方向、大きさの4つの未知数を求めるための理論を再考した.水槽実験の結果は、新しい推定手法が妥当であることをしめしていた.このような理論の再構築に時間を要したため、脳波計測実験が年度後半にずれこみ、研究計画にずれを生じた.ただ、大きな問題は解決したため、最終年度では研究計画は予定通り終了する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度には、次の2つの研究項目を実施し、研究を総括する. 1つめの項目は、インナーマッスルの筋電図計測への応用である.本高速分圧抵抗スイッチング計測システムによって、大きな分圧抵抗に対しては、表層筋と深層筋の筋電図の重畳した筋電図信号が得られ、小さな分圧抵抗によって、深層筋の筋電図を小さく計測することが出来るため、その差から深層筋の筋電図が分離できる.ただし、脳波に比べ、筋電図の周波数帯域は広いので、分圧抵抗の切替周波数をどこまで上げることができるかも本研究項目の重要な課題である.周波数の増加がうまく行かない場合には、積分筋電図を利用する.筋電図は両極に均等に振幅を有し、特徴的な波形を有しないため、皮膚表面で計測される積分筋電図は表層筋、深層筋各々の積分筋電図の和と考えることができる.従って、分圧抵抗を低周波で切り替え、区間毎に積分筋電図を求めることで、インナーマッスルの筋電図成分を分離できる. 研究の第2項目は、脳内信号の3次元分布推定方法の精度の向上である.これまでは、他の研究同様、脳内のインピーダンスは均等であると仮定して、その位置を推定してきたが、実際には頭蓋骨のインピーダンス、脳腔内のインピーダンスはそれ以外の部分と異なるとしなければならない.これらのインピーダンスの違いを考慮して、位置推定精度を向上させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
論文掲載は平成26年度内に完了したが、掲載費の請求、支払いが年度内に完了しなかったため、論文掲載費の予定額を次年度に繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
上記論文掲載費として使用する.
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