研究課題/領域番号 |
25282139
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川下 将一 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (70314234)
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研究分担者 |
金高 弘恭 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50292222)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | チタン / 窒素ドープ / 光触媒特性 / 生体活性 / 可視光応答 |
研究概要 |
チタン(Ti)金属板を5 M 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に60℃で24時間浸漬し、続いて1 M アンモニア水(NH4OH)あるいは1 M 硝酸(HNO3)に40℃で24時間浸漬した。その後、試料を洗浄、乾燥させ、600℃で1時間加熱処理した。 NaOH-NH4OH-加熱処理により、Ti金属表面に既報のNaOH-加熱処理の場合と同様の微細な網目構造が形成されたが、NaOH-HNO3-加熱処理の場合は、そのような網目構造は形成されなかった。また、NaOH-NH4OH-加熱処理の場合には、表面にアナターゼ型TiO2と少量のルチル型TiO2が形成され、NaOH-HNO3-加熱処理の場合には、主にルチル型TiO2が形成された。さらに、NaOH-NH4OH-加熱処理試料では、0.4 atomic%のNと1.4 atomic%のNaが検出され、NaOH-HNO3-加熱処理試料では、1.7 atomic%のNが検出されたが、Naは検出されなかった。 これら処理を施した試料を擬似体液(SBF)に36.5℃で1週間浸漬したところ、NaOH-NH4OH-加熱処理試料はアパタイトを形成したが、NaOH-HNO3-加熱処理試料はアパタイトを形成しなかった。また、未処理、NaOH-加熱処理、あるいはNaOH-NH4OH-加熱処理したTi金属をメチレンブルー(MB)水溶液に浸漬し、蛍光灯を6時間照射した後、MB濃度変化を可視紫外分光光度計により調べたところ、NaOH-NH4OH-加熱処理試料は、未処理あるいはNaOH-加熱処理試料に比べ、やや多量のMBを分解した。以上より、Ti金属をNaOH処理後、NH4OHで処理し、さらに加熱処理すれば、同金属にアパタイト形成能と可視光下での光触媒活性を付与させ得ることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書では、可視光での光触媒活性と生体活性(擬似体液中でのアパタイト形成能)を併せ示すチタンを得る条件を見出す計画であった。本年度の研究により、水酸化ナトリウム-アンモニア水-加熱処理が有効であることが見出されたので、おおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの達成度」欄に記載したように、可視光での光触媒活性(メチレンブルー分解能)と生体活性(擬似体液中でのアパタイト形成能)を併せ示すチタンを得る表面処理条件を見出すことができたが、可視光下での光触媒活性(メチレンブルー分解率18%程度)は更に向上できる可能性があるので、平成26年度は、他の表面処理方法も検討する予定である。目的の良好な可視光触媒(メチレンブルー分解率30%程度)が得られれば、抗菌試験や細胞適合性試験に移行したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に必要な物品の納入価格や人件費が当初の見積よりもやや下回ったため、次年度使用額が生じた。 平成26年度中に全額を試薬等の研究消耗品の購入に充てる予定である。
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