研究実績の概要 |
純Ti板(10×10×1 mm3)を5 mLの5 M 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に60℃で24時間浸漬し、続いて7 mLの純水に80℃で48時間浸漬した。その後、試料を洗浄、乾燥させ、アンモニア(NH3)雰囲気中、600℃で1、3あるいは5時間加熱処理した(NaOH-温水-NH3加熱処理)。得られた試料を30 mLの擬似体液(SBF)に36.5℃で1週間浸漬し、SBF浸漬前後の試料の表面構造を調べた。また、試料をウェル内(直径15 mm)に置き、1,000,000 コロニー形成単位(CFU)の大腸菌を含む菌液1 mLを加え、上方より可視光(照射強度:110 W/cm2、波長:415-650 nm)を1時間照射した後、段階希釈した菌液を寒天培地に塗抹し、翌日にCFUを算出することにより、試料の抗菌性を評価した。 その結果、NaOH-温水-NH3加熱処理チタン表面には、窒素を2.3~4.9 atom%含む、アナターゼ型TiO2からなる網目構造が形成された。また、1あるいは3時間の加熱処理の場合には、主にN-Ti結合と僅かのN-O-Ti結合が形成されたが、5時間の加熱処理の場合には、N-Ti結合は減少し、新たにN-O結合が形成された。また、NaOH-温水-NH3加熱処理チタンは、加熱処理時間に関わらず、SBF中でアパタイトを形成したが、5時間の加熱処理の場合は、試料のアパタイト形成能はやや低下した。NaOH-温水処理によってチタン表面に形成されたTi-OHやTi-O-TiがNH3と反応してTi-O-N=Oを形成し、それがアパタイト形成に不利に働いた可能性がある。さらに、NaOH-温水-NH3加熱処理チタンは、加熱処理時間が1あるいは3時間の場合に、可視光の照射によって大腸菌をほぼ完全に死滅させた。
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