研究課題/領域番号 |
25282141
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮田 完二郎 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50436523)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 核酸医薬送達 / ブロック共重合体 / siRNA |
研究概要 |
本研究の目的は、核酸医薬(siRNA)を腫瘍組織へと安全かつ効率良く送達するためのキャリアを開発することである。この目的を達成するためには、血流中での高い安定性および腫瘍組織での優れた浸透性がキャリアに求められる。これらを満たすために、本研究ではsiRNA1分子がポリエチレングリコール(PEG)で効果的に保護された「最小スケールのsiRNAキャリア」を設計した。本年度は、siRNAとの間でポリイオン複合体(PIC)型キャリアを形成するためのPEG化ポリペプチドの基本構造の最適化を検討した。まず、重合度の異なる種々のPEG化ポリペプチドを合成し、siRNAとの間でPICを形成させ、会合数・サイズ(流体力学径)・安定性を比較検討した。結果として、ポリペプチド重合度に依存して会合数が厳密に制御されることを見出し、特定の重合度以下ではsiRNA1分子が選択的に封入されたPICが得られることを確認した。また、1分子siRNA封入PICのサイズに関しては、搭載されたPEGのランダムコイル状態の流体力学径に対応することが確認された。すなわち、PEGの分子量によりPICのサイズ制御が可能となることが見出された。一方、1分子siRNA封入PICの血清中での安定性に関しては、搭載されたPEGの分子量と本数の増大に伴って向上することが明らかになった。続いて、血清中で最も安定であった1分子siRNA封入PIC(<20nm)を用いて動物実験を行った。蛍光標識siRNAを用いてPICの血中滞留性を評価したところ、siRNA単体と比較して数十倍の血中半減期が得られた。さらに、マウス皮下に移植した膵臓がんに対する組織浸透性を生体内蛍光顕微鏡で評価したところ、市販のin vivo用siRNA導入試薬では全く組織浸透が見られなかったのに対し、1分子siRNA封入PICでは広範囲な組織浸透が達成された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、1分子siRNA封入PIC型キャリアを構築するためのPEG化ポリペプチド基本構造(重合度など)を最適化することができた。また、最適化されたPICを用いて初期的な動物実験を行ったところ、高い血中滞留性と皮下腫瘍組織に対する優れた組織浸透性を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度以降は、H25年度に最適化されたPEG化ポリペプチドの基本骨格構造に基づき、さらなる機能改善を検討する。具体的には、(1)ポリペプチドのカチオン性側鎖構造の改変、(2)標的とするの細胞表面に対して高いアフィニティを有するリガンド分子のPEG末端ヘの導入である。カチオン性側鎖構造の改変に関しては、非天然型のペプチドを含めた複数種類を検討し、siRNAとの結合力の強化を図る。血清中での安定性試験においてsiRNA封入PICの安定性の向上が確認された場合は、動物実験へと展開する。そして、血中滞留性、腫瘍集積性、組織浸透性、さらには治療用siRNAを用いたがん治療実験を行い、本siRNAキャリアの医療応用への有用性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究開始当初は、本課題で開発された核酸キャリアの安定性評価を主としてマウスを使用した動物実験を中心に行う予定であったため、それに用いる蛍光標識核酸および実験動物費を計上していた。しかしながら、蛍光相関分光法を利用したin vitroでの(動物を使用しない)安定性評価法が十分に確立され、かつ実験動物を殺すことなく非侵襲的に安定性を評価するin vivo共焦点顕微鏡法も利用することができたため、上記経費を削減することができた。 上述のように、新たな実験手法の確立に基づいて実験の低コスト化が進んだことから、より多くの検体を評価することができるようになった。よって、今後はより多角的な視点で核酸キャリアを開発し、評価を進める予定である。この際に必要となる物品費(合成核酸、ペプチド、リンカー分子など)に次年度使用額を充てることを計画している。
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