研究課題/領域番号 |
25282143
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
二階堂 敏雄 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (50180568)
|
研究分担者 |
吉田 淑子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (00171421)
岡部 素典 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (60283066)
小池 千加 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (10523889)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 生体機能材料 / 乾燥羊膜 |
研究概要 |
羊膜細胞を得るために、患者よりインフォームドコンセントを得て羊膜を採取し、細かく破砕したのち、トリプシン、コラゲナーゼで処理することによって、上皮細胞、間葉系細胞を回収後、分離培養を行った。分離した羊膜上皮、間葉系細胞を超低付着培養ディッシュにてsphereの形成条件で浮遊培養した結果、sphereを形成した。自己複製能を検討する為に、形成されたsphereを回収後に分散させ、再度超低付着培養ディッシュにて浮遊培養したところ、再びsphereを形成することから、自己複製能が確認された。自己複製能を有するsphereを回収し、幹細胞マーカーのNanog, Oct3/4, SSEA4の遺伝子発現をRT-PCRまたはウェスタンブロット法、免疫組織染色にて検討した結果、これら幹細胞関連因子をディッシュに付着培養することにより、分化刺激が加わった細胞群やマウスのES細胞と発現強度を比較したところ、ES細胞ほどでは無いが幹細胞関連因子の発現が確認された。高い細胞密度で播種し自らfeederとなることでディッシュとの接着を回避させると浮遊培養と同じような環境となり、sphere様のコロニーが形成されることも見出した。SCIDマウスを用い、2-AA、CC14にて肝傷害を誘発し、肝傷害疾患モデルマウスを作成し、分離した幹細胞群、非分離細胞群をそれぞれを移植し、標的組織への定着度、細胞分化度、標的組織を摘出後、移植細胞による組織再生効率を検討した結果、肝細胞に特異的に発現する遺伝子(Albumin, α fetoprotein, α anti-trypsine)などの発現がRT-PCR、免疫組織染色法で確認さされず、またGOT,GPT値の解析の結果、機能の回復も、見られなかったものの、組織学的に傷害部位の回復が見られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
羊膜細胞は、sphereを形成し、自己複製能があることが確認され、幹細胞関連因子の発現が確認されたことより、幹細胞の分離ができたものと判断された。しかしながら、肝障害疾患モデルマウスに分離した幹細胞の移植により、肝細胞特異的な遺伝子発現や肝機能の回復が見られなかった事から、移植の条件等、今後更に検討すべきであると判断された。これらの結果から、計画はおおむね順調に進展していると判断された。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策については、移植の条件等の検討、更には分離した幹細胞の分化能、発がんの可能性、免疫抑制能を検討する。特に1)分化能の検討:羊膜由来上皮細胞あるいは間葉系細胞をフローサイトメトリーによりマーカーを用いて、あるいはマイクロチップを用いて大きさにより細胞の分離を行う。分離した細胞の各種細胞、各種組織への分化能力をin vitro, in vivoにて検討する。また、自己複製能が確認されたSphereを分離、回収し、in vitroにおける分化誘導を行う。2)分離した細胞の癌化能の検討:癌化しうる細胞は臨床応用できないので、その可能性を否定するために、羊膜由来上皮細胞あるいは間葉系細胞をフローサイトメトリーによりマーカーを用いて、あるいはマイクロチップを用いて大きさにより細胞の分離を行い、分離した羊膜由来体性幹細胞の癌化能を検討する。ヌードマウスを用い、表面マーカーを用いて分離した幹細胞の癌化能を検討する。移植3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月後に移植部位を摘出し、組織構造解析や癌化マーカー遺伝子の発現解析をRT-PCR, 免疫組織染色法などにより行う。3)免疫抑制因子の発現解析:羊膜および羊膜由来上皮細胞、および間葉系細胞を用いて、RT-PCR あるいは免疫染色により、HLA-G, IL4, IL6, IL8, IL10, Cox2、TGFβ等の免疫抑制因子の発現を検証する。 このように羊膜由来体性幹細胞分離方法の確立により再生医療の新たな細胞源を確保し、細胞移植療法の可能性を検討後、次年度以降に臨床応用研究を行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
動物実験のための動物購入、飼育費用と、細胞培養に係る培養試薬等の定期的、安定的購入資金が必要なため、次年度への繰り越しとなった。 物品費として、細胞培養用試薬等、動物及び動物飼育費等の費用に使用する。
|