研究課題/領域番号 |
25282144
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
紙谷 浩之 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 教授 (10204629)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 遺伝子治療 / プラスミドDNA |
研究実績の概要 |
・アセチル基転移酵素を利用したヒストン修飾制御:平成25年度において、activatorとして配列依存的DNA結合蛋白質(酵母GAL4の配列依存的DNA結合ドメイン)とマウスのヒストンアセチル基転移酵素(ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT))の融合蛋白質の遺伝子を作製し、また、GAL4の配列依存的DNA結合ドメインが結合する配列をreporter遺伝子とGAL4-HAT遺伝子の上流と下流に導入した結果、activator(GAL4-HAT)と共導入した場合に、reporter遺伝子(ルシフェラーゼ遺伝子)の発現が上昇する傾向にある事を明らかにした。本年度は、GAL4-HAT遺伝子との共導入によるreporter遺伝子発現上昇効果が有意であることを明らかとし、また、この効果がヒストン脱アセチル化酵素阻害薬(ヒストンのアセチル化をgenome-wideに促進する)トリコスタチンAによりマスクされる傾向を観察した。従って、共導入による発現上昇の分子機構は、予想と同じくプラスミドDNAに結合するヒストンの特異的アセチル化である可能性が支持された。 ・ヒストン低親和性配列によるヌクレオソーム形成阻害:ヒストンとの結合を防ぐ(ヌクレオソーム形成を抑制する)T22配列をプロモーター下流(プロモーターと転写開始点との間)に導入した。その結果、予想とは異なり、外来遺伝子発現が低下した。また、プロモーター上流にT22配列を導入したが、発現に影響は無かった。 ・配列変換システムの開発:申請者が開発したtailed duplexによる配列変換法においては、標的部位にミスマッチが存在する。この方法は、細胞内の相同組換え機構に依存して配列変換が生じると考えられるため、標的部位以外の第二のミスマッチが存在すると配列変換効率が低下すると予想された。そこで、本年度に標的部位以外のミスマッチの影響を調べたところ、予想外に配列変換効率が上昇する傾向が観察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラスミドDNAと結合する核内蛋白質ヒストンの修飾状態を「転写されやすい状態」に保持することによる発現の向上・維持(ヒストンとの相互作用制御)がある程度達成できたため。また、標的部位以外の第二のミスマッチの存在により、配列変換効率が上昇する可能性を明らかにできたため。
|
今後の研究の推進方策 |
アセチル基転移酵素を利用したヒストン修飾制御においては、その効果をさらに詳細に検討するとともに、activator遺伝子とreporter遺伝子を同一プラスミドDNAに搭載することにより、さらなる活性化を図る。遺伝子修復に関しては、標的遺伝子をlacZα遺伝子に変えて、網羅的に第二のミスマッチの影響を調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
プラスチック製品などの消耗品は可能な限りキャンペーン品を購入することにより、研究進捗を遅らせること無く、予定よりも大幅に費用を削減した。また、購入を予定していた高額消耗品(キット)を購入せず、実験者が調製した試薬により代用ができたため、研究費用を大幅に削減できた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、本研究に従事する研究協力者(大学院生・学部生)の総数が大幅に増えるため、消耗品の補充に当てる予定である。
|