研究課題/領域番号 |
25282145
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
中山 正道 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (00338980)
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研究分担者 |
長瀬 健一 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (10439838)
秋元 淳 東京女子医科大学, 医学部, 博士研究員 (80649682)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 癌 / 薬剤反応性 / 組織工学 / バイオイメージング / バイオリアクター |
研究実績の概要 |
がん細胞シート作製のための温度応答性培養基材と培養条件の最適化において、細胞の播種条件や培養期間を検討することで、マウスおよびヒト臓器がん(肝臓がん、皮膚がん、乳がん)由来の種々のがん細胞株から細胞シートの作製に成功し、作製するがん細胞シートの多様化を達成している。また、効率的な温度応答性表面の作製技術として、温度応答性ブロック共重合体を数十ナノメートルの厚みで市販の細胞培養皿上に物理コーティングする手法を確立した。この作製法を利用することで、3次元的な細胞シート積層化組織の培養ならびに回収を行うための多孔性膜型の温度応答性セルカルチャーインサートの作製についても実現している。 担がんマウスモデル動物の作製では、マウス乳腺がん細胞(4T1)シートおよびヒト乳がん細胞(MCF-7)シートをマウス皮下だけでなく、同所性組織である乳腺部に移植するモデルを作製し、酵素処理により回収した細胞懸濁液の注入法と比較検討した。その結果、in vivo発光イメージング法により、細胞シート移植群で顕著な腫瘍形成能が確認された。また、細胞シート移植法として、ゼラチンゲルをコーティングした細胞シートキャリア技術について検討しており、マウスなどの小動物への移植に最適な数ミリサイズの細胞シートを乳腺部や肝臓などの生体組織に効率的に移植するが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がん細胞シートを効率的に剥離させるための温度応答性培養表面の最適化により、種々のがん細胞株からなる細胞シートの作製に成功している。薬物スクリーニングに最適な腫瘍サイズを有するマウスモデルを作製するために、数ミリサイズのがん細胞シートの作製とこれを効率的に生体移植する細胞シートキャリア技術についても確立した。移植したがん細胞シートは、従来の細胞懸濁液の注入移植法と比較して、高い組織生着性および腫瘍形成能を示すことが明らかとなっている。また、乳がん細胞の同所移植モデルについて、マウスおよびヒト由来がん細胞を用いて検討し、がん同所性移植モデルの作製についても実現している。現在、がん細胞シート移植により形成した腫瘍組織の形態観察ならび薬物応答性についても検討を始めている。
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今後の研究の推進方策 |
乳がんの同所性がん移植マウスモデルの評価として、異所組織である皮下移植法で形成した腫瘍と比較検討しながら、腫瘍の薄切切片を免疫染色することで組織学的評価をおこない、臨床病理でみられるがん組織の形態額的特徴と比較し、同所組織に形成した腫瘍組織の特徴を明確にする。また、既存の抗がん剤や抗がん剤封入リポソーム等を投与することで薬剤応答性について検討する。一方、3次元がん細胞シート積層化組織内における毛細血管網の導入とその評価として、バイオリアクター型の培養システムを併用して長期培養を検討する。この際、内皮細胞のネットワーク形成と管腔構造の構築を促進する生理活性因子を検討しながら、灌流型の血管網を有する3次元がん組織モデルの構築について追究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
in vitroがん組織モデルの研究実施のスケジュールを考慮して、蛍光発現型の血管内皮細胞株、灌流培養系に使用する培養液およびそれに添加する生理活性因子の購入を次年度以降に変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
in vitro3次元組織モデル内における毛細血管網の形成を確認するために蛍光タンパク発現型の血管内皮細胞を購入し、蛍光イメージング法により効率的に評価する。また、3次元組織内へ血管網が形成するために最適な灌流型培養システムの構築のために培養液組成およびこれに添加する生理活性因子と濃度条件を模索する。
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