研究課題/領域番号 |
25282146
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
寺田 弘 新潟薬科大学, 健康・自立総合研究機構, 機構長 (00035544)
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研究分担者 |
牧野 公子 東京理科大学, 薬学部, 教授 (40147509)
竹内 一成 東京理科大学, 薬学部, 助教 (10734931)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 薬物送達システム / マクロファージ / 結核 / 肺がん / 経気管投与 |
研究実績の概要 |
病原体が体内に侵入すると、生体防御系の一員であるマクロファージによって捕捉され分解される。しかし、病原体もマクロファージに対して攻撃を仕掛け、マクロファージの性質を本来の攻撃型(「善玉系」)から病原体を保護する「悪玉系」へと変化させてしまう。その様な変化を与える病原体の代表的なものとして結核菌とがん細胞とがある。本研究では肺結核、肺がんおよびCOPDなどの肺疾患を克服するために、病態に依存したマクロファージの表現型の変化の仕組みを明らかにするとともに、治療効果を有効にするために治療薬を疾患部位である肺に送達する経気管DDS装置を開発することを目的としている。本年度に得られた研究成果は以下に記す通りである。 1) 結核感染肺胞マクロファージにリポ多糖(LPS)を投与すると、マクロファージに貪食された結核菌を有効に殺菌するばかりでなく、結核菌とマクロファージなどによって形成されている肉芽腫を分解する作用があることを明らかにした。この作用は、LPSが善玉マクロファージの存在率を増大させるからである。 2) 肺がん細胞は、マクロファージを悪玉マクロファージに改変し、がん細胞を保護するようにしてしまう作用があるが、LPSは善玉マクロファージの存在率を増大させ、その結果がん細胞を死滅させる作用があることを見いだした。 3) しかし、LPSは極めて低濃度で炎症反応を誘導する毒性が高い薬物である。ONO-4007はLPSに替わる低毒性の薬物として有効であることを見いだした。 4) COPDは炎症が持続化することによって発症する肺疾患であるが、そのモデル動物の作出を行った。 5) 治療薬を疾患部である肺胞にまで送達する装置の開発も試みた。その結果、ベンチュリー効果などを活用してミクロンサイズおよびナノサイズの製剤を有効に肺胞に送達可能な装置を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、平成26年度には、1)病原体によるマクロファージの表現形の変換に関する分子機構、2)マクロファージの表現形を善玉マクロファージの表現形に変換する薬物の探索、3)マクロファージの形質変換が抗結核作用、抗がん作用におよぼす影響、4)経気管投与に最適な微粒子製剤の調製法を行うことにしていた。その結果、2および3の項目に関してはほぼ満足すべき成果を得ることができたが、1および4項に関しては、未だ研究すべき事項が残っている。その原因として、1項は、マクロファージの生物機能を理解する上で根幹をなす課題であり、このことを解明する意義はきわめて大きいので、遺伝子解析を主とした研究を行ったが、変換機構を理解するには至っていない。また、4項に関しては、粒子間の凝集を如何にして制御したらいいかに関する研究を主体的に行った結果、一定の成果を得ることができた。しかし、完成のためには次年度における研究が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進展に関わる大きな問題はない。次年度も、当初の計画通り研究を推進する。
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