研究課題/領域番号 |
25282150
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
阿部 宏之 山形大学, 理工学研究科, 教授 (10375199)
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研究分担者 |
黒谷 玲子 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (00453043)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞呼吸 / 電気化学計測 / 細胞機能診断 / ミトコンドリア / 生殖医療 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアは、機能分化した細胞においてはエネルギー産生やアポトーシスなどの重要な生命現象に関わっている。したがって、精度の高い呼吸計測技術は細胞の代謝活動やクオリティーの評価、アポトーシスの解析やミトコンドリアの機能異常に関連した疾患の診断に極めて有効な方法となる。本研究では、電気化学計測技術を基盤とする医療応用可能な超高精度細胞呼吸測定システムの開発を目的とする。平成26年度は、前年度に引き続き、単一細胞非侵襲呼吸計測システムを開発するために、(1)超高感度マイクロ電極の開発、(2)単一細胞呼吸測定技術の開発、(3)非侵襲呼吸測定液の開発、(4)極微量試料を用いたミトコンドリア呼吸機能解析技術の開発、以上の4項目の研究を行った。(1)では、酸素の還元条件下-0.6 V、計測レンジ1 nA、電流値-0.2~-0.5 nAの感度を有するマイクロ電極の安定した作製システムを確立し、マウス卵子及び胚の呼吸測定により性能評価を行った。(2)では、測定精度に影響するマクロ電極先端径、マイクロ電極-試料間の距離(電極先端位置)、マイクロ電極の走査速度及び走査距離などの基本条件を決定することができた。(3)では、受精卵培養液をベースに、マイクロ電極を汚染せず、超微弱(pAレベル)電流の検出にも影響しない計測液を作製することができた。(4)では、呼吸測定システムにより非侵襲的に呼吸量を測定したマウスの単一卵子及び胚を用いて、JC-1等の蛍光染色によりミトコンドリアの局在を検出することができた。また、呼吸測定後の単一卵子及び胚の微量試料におけるATP量の定量化に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間(4年間)の前半において、最も重要であった単一細胞(卵子・胚)の非侵襲呼吸測定システムを開発することができた。平成26年度では、新たに開発した呼吸測定システムを用いて呼吸測定した卵子及び胚のミトコンドリア呼吸機能解析の可能性示すことができ、本研究の最終目標である医療対応型細胞診断システムの開発に大きく前進した。したがって、当初の研究計画は順調に進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度までに得られた成果を検証・総括し、「単一細胞呼吸測定システム」を完成させる。平成27年度では、前年度までに研究項目(3)として設定していた「極微量試料を用いたミトコンドリア呼吸機能解析技術の開発」を重点的に行う。具体的には、単一の卵子や培養細胞から得られる極微量試料でのミトコンドリア呼吸機能解析技術を確立するために、①非侵襲ミトコンドリア局在解析、②高精度ATP定量解析、③酵素複合体チトクロームc酸化酵素(COX)の遺伝子発現解析を行う。この研究項目は、技術的にも高い難度が予想されることから、共同研究者と密に連携し、単一試料からの微量試料を用いた解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究事業では、(1)単一細胞呼吸計測システムの開発と(2)ミトコンドリア呼吸機能解析を研究の柱としている。平成26年度は、(1)の単一細胞呼吸計測システムの検証実験と(2)のミトコンドリア呼吸機能の生物学的解析を行った。(2)における遺伝子発現解析は予備実験の段階で終了したため、学術研究助成基金助成金の一部使用で研究の目的を達成することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度では、平成26年度までの結果を検証し、極微量試料を用いたミトコンドリア呼吸機能解析技術の開発を重点的に行う。特に、酵素複合体チトクロームc酸化酵素(COX)の遺伝子発現解析を実施するために、抗体や遺伝子解析関連試薬の購入に科学研究費補助金および学術研究助成基金助成金を充てる。
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