研究課題/領域番号 |
25282155
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 浩基 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (70391274)
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研究分担者 |
櫻井 良憲 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (20273534)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 硼素中性子捕捉療法 / 線量評価 / SPECT / 光ファイバー |
研究概要 |
これまでにSPECTを用いて478keVの即発ガンマ線を画像化する手法は研究されてきたが、BNCT の照射場のガンマ線のバックグランドが高いため、実現に至っていない。本研究における解決すべき課題は(a)消滅ガンマ線である511keVガンマ線を除去すること、(b)水素の即発ガンマ線2222keV及び構造体からのガンマ線のコンプトン散乱によるバックグランドガンマ線を除去すること、(c)中性子による損傷のため半導体検出器を使用できないこと、(d)光電子増倍管はシンチレータに密着することが出来ないことである。本年度は上記課題のうち、(b)、(c)、(d)を克服することが可能なシステムを構築した。(b)2222keV 及び構造体からのガンマ線の除去にはLaBr3無機シンチレータの周りにシンチレータを設置したホスウィッチ型の構造とした。(c)高エネルギー分解能、信号の減衰時間が短いLaBr3をシンチレータとして採用した。(d)石英光ファイバーを用いてシンチレータで発生したシンチレーション光を光電子増倍管へ導く構造とした。光電子増倍管は照射室の外もしくは照射口より遠い位置に設置する事ができる。また光電子増倍管が高強度のガンマ線によって照射されるのを防ぐことができる。光ファイバーの入射面を8x8の二次元に整列し、LaBr3シンチレータに設置した。それぞれの光ファイバーの逆側はマルチチャンネルの光電子増倍管の光電面に設置した。入射ガンマ線のエネルギーの情報は光電子増倍管のイベントをアンプに入力しエネルギースペクトルを取得することができる。LaBr3の周りにホスウィッチ用としてプラスチックシンチレータを配置し、周りから入射してくるガンマ線のイベントを取得できる構造とした。構築したシステムの特性試験を実施した。またホスウィッチ検出器のバックグランド除去能力の評価を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バックグランドの高いBNCTの照射場に適応可能なSPECT装置のシステムの構築に成功した。システムの構築を順調にすすめることができた。一方、特性試験を実施したところ、光電子増倍管及びシンチレータと石英光ファイバーとのつなぎの部分においてシンチレーション光の減衰があることを確認した。エネルギー分解能の劣化につながるため、改善する必要があることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はシンチレーション光の減衰を改善可能なシステムの再構築を行う。また、システムを一つ追加し、対方向にシステムを設置する。放射線同位元素を用いて511keV ガンマ線が除去可能かどうか原理確認を実施する。次にKURの中性子導管設備もしくは重水照射設備において平成25年度に構築したシステムの特性試験を実施する。既存のリアルタイム熱中性子検出器と組み合わせて、水ファントムを用いた照射実験を実施する予定である。水ファントム内には実際の臨床試験で得られる腫瘍硼素濃度50~100ppm を模擬した領域を作成し、中性子ビームを入射させることで硼素の画像が得られるか確認を行う。照射試験を通じて実機へ向けた課題の抽出を行う。最終年度は実機へ向けたシステムを構築する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
システムの特性試験を実施する際に京都大学原子炉中性子源が必要となるが、平成25年8月から平成26年3月末まで休止していた。システムを改善した後の特性試験を京都大学原子炉中性子源で行うことが出来なかった。特性試験後にさらに改善点が出てきた際のシステムの改良費として次年度へ予算を繰り越した。 平成25年度に繰り越した予算は全てシステムの改良費として使用する。平成26年度に予定している予算は全て当初の計画通りに執行する予定である。
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