研究課題/領域番号 |
25282158
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
石原 美弥 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 教授 (30505342)
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研究分担者 |
石原 雅之 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 防衛医学研究センター, 教授 (10508500)
堀口 明男 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院, 講師 (20286553)
大谷 直樹 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院, 講師 (20573637)
櫛引 俊宏 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 准教授 (30403158)
津田 均 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 教授 (70217321)
服部 秀美 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 防衛医学研究センター, 助教 (80508549)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光超音波画像 / トモグラフィ / ヘモグロビン / マルチスペクトル / 微小血管 / CD31免疫染色 / 医師主体の臨床研究 / 皮下腫瘍モデルマウス |
研究実績の概要 |
血管を直接治療する,あるいは血管の分布を利用する治療において,血管に関する定量的かつ機能的情報は有用である。生体内の主要な光吸収体であるヘモグロビンを撮像分子とした光音響イメージングでは血管の分布画像が得られるが現在のところ定量性がない。本研究では,光音響信号から疾病診断や治療方針の決定に寄与する定量性を抽出できるような要素技術開発と,開発技術を用いたin vitroからin cells,in vivo実験,医師主体の臨床研究の実施を目的としている。光音響信号は,入力側としてレーザーのエネルギー,パルス幅,波長のパラメータがあり,出力側として,超音波の強度や周波数のパラメータがある。血管の分布画像に血管径の定量性を付加するには,生体内,特に血管内の光音響信号伝搬を正確に反映するハードウェアの開発とそれを解析する技術が必要である。本研究では光音響信号の広帯域性に着目し,光音響信号の時間波形を正確に測定することを目的にP(VDF-TrFE)フィルムをセンサ材料にしたセンサを開発し,PZTセンサと併せてデータ取得している。本年度は光音響信号から血管内ヘモグロビン由来の信号を抽出するために励起波長をマルチスペクトル化し,スペクトルアンミキシング解析を導入した。具体的には,ヌードマウス,ウサギ,摘出ヒト組織,ヒト腕を対象に測定した。ヌードマウス及びウサギは防衛医科大学校動物実験倫理委員会の承認を得て,摘出ヒト組織及びヒト腕は防衛医科大学校倫理委員会の承認を得て実施した。すべての対象においてセンサをスキャンすることで血管網として画像を描出することができた。特に摘出ヒト組織の場合において病理画像との参照の結果,微小血管まで描出できていることがわかった。一方で,血管径を反映したデータが取得できない条件があった。最終年度は要素技術開発とデータ解析の両面から精度向上を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実用的なシステム開発には,実際にデータを取得してその結果をフィードバックすることが必須である。本研究で目指している定量性の概念を取り入れた光音響イメージングシステム開発においても,精度,感度,ロバスト性を明確にしつつ,研究開発を進めている。本年度,ヌードマウス,ウサギ,摘出ヒト組織,ヒト腕を対象に測定ができたことは,最終的なシステム仕様を決定するための網羅的な解析や分析ができるようになり,研究を効率的に進める上で重要であった。すなわちある程度予測はできていたものの,測定対象及び目的によって至適なハードウェアの仕様は異なり,各々の仕様が明確になりつつあること,所望の信号を抽出できるようになったことなどが大きな成果と考えている。特にヌードマウスやウサギ,及び摘出ヒト組織を対象にした実験では実験後に病理解析ができ,加えて動物実験の倫理委員会承認下で動物側の生理的条件を変更できるため,システム性能の信頼度が高められる成果につながった。 本年度の具体的成果として,P(VDF-TrFE)フィルムセンサの高感度化及び耐ノイズ性の向上を図りつつ,周波数や感度分布(指向角)について設計通りの結果が得られ,感度が2.5倍以上増加した。さらにPZTセンサと定量的な比較検討ができ,光音響信号の周波数特性に応じたP(VDF-TrFE)フィルムセンサの強みが明確になった。データ解析の1つであるスペクトルアンミキシング法については,Spectral fitting法に加えて演算速度の速いSavitzky Golay 法を新たに導入し,目的に応じて使い分ける,つまり相補的な解析ができるようにした。 以上より,計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の最終年度,目標達成に向けて研究を更に推進する。ヌードマウスやウサギを用いた動物実験と医師主体の臨床研究において,血管治療に役立つ定量性を確保するために満たすべき感度と精度を厳格に明確にし,最終年度中に要素技術の詳細仕様を決定,試作し,性能評価する。重要な点は目指すべき測定範囲を具体的に対象とする血管径の範囲とその深度から確定し,その測定範囲内で感度と精度が十分に得られるように仕様を決め込むことである。すでにセンサの仕様について,ヌードマウスやウサギの血管径は数mm程度であるのに対して,現在開発中のセンサは十分な広帯域が確保できており,深さ方向の分解能は十分な性能が得られると見込んでいるが,実際には犠牲死後の病理画像から確認検証する。臨床研究では,現在描出できている橈骨静脈およびその分岐は血管エコーやドプラーでも描出できるため血管画像と容易に比較検証できる。血管エコーおよびドプラーでは描出できない微細な血管については解剖学的および生理学的所見より検証し,大血管に関する検証も併せて実施する。一方で所望の精度と感度が得られない血管について,考えられるハードウェアの改良とデータ処理を含めた開発システムの検出限界と,光音響イメージング手法そのものの可能性を含めて,本研究を総括する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度,マウス,ウサギ,ヒト検体と幅広く測定対象を設定しデータを取得したために,システムの最終仕様を煮詰めるのに計画より時間を要した。このため,実際に費用が発生するシステム試作に関わる費用の分,繰越金が発生している。
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次年度使用額の使用計画 |
システム構築に必要な光学部品と,センサ性能評価に必要な実験動物及び消耗品,実験補助を中心に,成果を公表する学会発表や論文発表に必要な支出も含めて計画している
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