日本ではのべ10万人以上が脊髄損傷(対麻痺)を抱えて生活している.また,脳血管障害の死亡率は年々減少しているものの,後遺症として片麻痺を抱えている人は約200万人と減少していない.超高齢化社会をむかえ,リハビリ訓練を支える理学療法士不足も懸念される.それゆえ近年のリハビリ工学的研究では,ロボット技術を用いた訓練システムの開発研究も多い.しかしながら,近年の臨床研究ではロボット技術を用いた訓練が果たしてどれだけの効果が得られるのかを疑問視する報告も多い.このような現状を踏まえて,本研究課題では,ニューロリハビリテーションの概念に基づいて様々な運動機能障害者の症状に対する多様な訓練処方を可能とするより訓練効果が期待できる免荷式歩行訓練システムを開発することを最終目標とした.本開発コンセプトに適合したハード,ソフトの両面で検討された装具部,免荷部およびアクチュエータであるマッキベン型空気圧人工筋を設計し,様々な試作を続けてきた.装具部はこれまで充分に二関節筋の性能を発揮できる装具フレームを設計できていなかったが,この点を克服する二関節筋モデルに適した装具フレームの再検討を重ね,概ね完成できた.免荷部は従来カウンターウェイト方式を用いていたが,身体重心の上下動による慣性が問題となり,装具と同様に人工筋をアクチュエータとする再設計を重ね,新たな免荷部を完成させた.これらの装具部および免荷部の制御系の開発も進め,装具の位置フィードバックシステムについては,歩行訓練速度に対応できる実用レベルにまで達成てきた.また,並行して力フィードバック(インピーダンス)制御システムも開発してきたが,残念ながらまだ実用レベルには至っていない.最終的にいくつか検討課題を残す結果となったが,多くの関連論文の研究成果報告ができたことからも本研究課題において一定の研究成果を上げることができたと思われる.
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