研究課題/領域番号 |
25282162
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
大西 秀明 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (90339953)
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研究分担者 |
田巻 弘之 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (40253926)
桐本 光 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (40406260)
鈴木 誠 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80554302)
佐藤 大輔 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 講師 (60544393)
山代 幸哉 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 助教 (20570782)
菅原 和広 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 助教 (10571664)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳磁図 / 経頭蓋磁気刺激 / MEG / TMS / 体性感覚誘発磁界 / 運動関連脳磁界 / 運動誘発電位 |
研究概要 |
運動遂行時における表在感覚の役割を明らかにするために,まず機械的触覚刺激(Aβ刺激)の刺激条件と一次体性感覚野(S1)の活動との関係を明らかにした(Onishi H et al. Brain Research 2014).306ch脳磁計(MEG)を利用し,小さな機械的触覚刺激用のピン1本,2本,3本,4本,8本を利用して,刺激ピン数とS1活動との関係を解析した.また2本のピンを利用してピン間隔を2.4 mm, 4.8 mm, 7.2 mmに設定して,ピン間隔とS1活動との関係を解析した.さらに,皮膚電気刺激による脳活動もあわせて解析した.その結果,機械的触覚刺激によるS1活動はピン数を増やすことにより増大することと,2本のピン間隔を2.4mmから7.2mmに広げることにより増大することが明らかになった.また,機械的触覚刺激時のピン数増加によるS1活動の増加率は電気刺激強度増大によるS1活動の増加率よりも小さいことが判明した. 次に,機械的触覚刺激が大脳皮質一次運動野の興奮性に及ぼす影響を明らかにすることを目的として実験を行った.健常成人を対象として,306 ch MEG装置を利用して触覚刺激時のS1活動のピーク潜時を計測した(実験1).次に,同じ被験者を対象にして,触覚刺激と経頭蓋磁気刺激(TMS)を組み合わせて触覚刺激が一次運動野の興奮性に及ぼす影響を解析した(実験2).触覚刺激とTMSの刺激間隔(ISI)は,実験1で算出された3種類のピーク潜時に2ms加えた値とした.その結果,ISIを36.0 ms,65.6 ms,129.1 msに設定した際に記録された運動誘発電位の振幅値は0.67 mV,1.09 mV,1.01 mVであり,ISIが36.0 msの条件ではコントロール条件と比較して運動誘発電位の振幅値が有意に小さくなった.このことから,点字に類似した軽度の機械的触覚刺激により35ms程度の短潜時でのみ一次運動野の興奮性に影響を与えていることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機械的触覚刺激の刺激条件と一次体性感覚野(S1)の活動との関係を明らかにすることができた.また,機械的触覚刺激が一次運動野(M1)の興奮性与える影響についても明らかにすることができ,概ね順調に推移していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降は,Aδ神経刺激,GIa神経刺激などの体性感覚刺激と脳磁図(MEG)および経頭蓋磁気刺激(TMS)を併用した実験を行い,各種体性感覚刺激が「一次運動野の興奮性」に与える影響を解明する. <課題1: MEG実験>皮膚内電極によるAδ神経刺激,ワイヤー電極によるGIa神経刺激,正中神経刺激(複合電気刺激)時における体性感覚誘発磁界を計測し,著明な活動が観察されるピーク潜時を被験者毎に詳細に計測する. <課題2:TMS実験>上記の算出されたピーク潜時に焦点をあてて,経頭蓋磁気刺激を行う刺激のタイミングを決定する.例えば,Aδ神経刺激後51, 102, 153 ms辺りに波形のピークが観察された場合,各ピーク潜時に2 msまたは10 msを加えた時間を刺激間隔として,皮膚触覚刺激後,53 msおよび61 ms, 104 msおよび112 ms, 155 msおよび163 msに大脳皮質一次運動野手指領域を経頭蓋磁気刺激によって刺激する.これによりAδ刺激が一次運動野の興奮性に与える影響について詳細に解析することができる.GIa神経刺激も同様に被験者毎に誘発脳磁場波形のピーク潜時を詳細に計測した後,経頭蓋磁気刺激実験を行う. さらに各種体性感覚刺激と単発磁気刺激の組み合わせだけでなく,体性感覚刺激と二連発磁気刺激を組み合わせて短間隔皮質内抑制(SICI)や皮質内促通(ICF)の変動についても検討を加える.SICIやICFは経頭蓋磁気刺激を2台使用し,80%閾値(閾値下)の条件刺激の後,2-5 msの刺激間隔で120%閾値(閾値上)の試験刺激を行うと,試験刺激によって誘発される運動誘発電位が小さくなり(SICI),条件刺激後10 msの刺激間隔で試験刺激を行うと誘発される運動誘発電位が大きくなるというものである(ICF).
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