研究課題
近年、成体脳においても脳室上衣下層(SVZ)や海馬歯状回顆粒層(SGZ)から神経発生が生じることが明らかになってきた。一方、脳梗塞後に運動を課すと、運動機能の回復が促進されることが知られている、そこで本研究は、実験的脳梗塞のモデルラットを用いて、運動負荷が脳梗塞の回復過程に如何に影響をあたえるのか、その組織学的基盤を明らかにすることを目的とした。我々は、梗塞後に1週間の運動負荷を与えるとニューロンが新生し梗塞巣に向けて移動する事が促進される知見を見出している。そこで今回、さらに長期に運動負荷を与えた影響について調査した。方法としては、8週齢のWistar系雄ラットに対して、光刺激による中大脳動脈血栓により実験的脳梗塞を引き起こさせた。術後翌日からトレッドミルによる運動負荷を1日1回30分間行った。また、BrdUを術後1週間腹腔内に投与した。さらに、運動負荷により産生される乳酸に着目し、MRSによる脳内乳酸量を測定した。術後28日目に脳を摘出し、免疫組織化学的に脳内のBrdU陽性細胞とSox2陽性細胞の分布を観察した。BrdUとSox2の分布は現在定量解析中である。またMRSにより測定した乳酸値は、術後急激に上昇し、3週目には正常値まで減少したが、4週目に再度上昇する傾向がみられた。また、運動皮質に梗塞巣が限局するモデル動物を用いて、本モデルとの比較研究を行った。8週齢のWistar系雄ラットに対して、光刺激により運動皮質に脳梗塞を引き起こさせた。術後翌日からトレッドミルによる運動負荷を1日1回30分間行った。また、BrdUを術後1週間腹腔内に投与し、術後28日目に脳を摘出し、免疫組織化学的に脳内のBrdU陽性細胞の分布を観察した。その結果、運動負荷により梗塞巣周辺のBrdU陽性細胞の増加が観察された。これらの事より梗塞巣の場所(位置)によらず、ニューロン新生が起こる可能性が示唆された。
3: やや遅れている
我々はヒト脳梗塞の病態モデルとして中大脳動脈の基部に血栓を作らせた動物を用いて運動負荷の役割について調べている。この動物では梗塞巣が広範であるため、ニューロン新生と運動機能の改善との関係性について分かりにくいという側面があった。そこで同時に梗塞巣を限局するモデルを作出して比較検討した。そのため、新たなモデルの確立と運動負荷が新生ニューロンの発生・分化・移動に与える影響を評価していたため、当初の研究計画から遅れが生じてしまった。
新たに脳梗塞が限局するモデルも確立されたので、今後、中大脳動脈血栓による脳梗塞モデルとの比較研究を進め、運動負荷による運動機能の回復と新生ニューロンによる再構築のメカニズムの解明を目指す。
我々はヒト脳梗塞の病態モデルとして中大脳動脈の基部に血栓を作らせた動物を用いて運動負荷の役割について調べている。この動物では梗塞巣が広範であるため、ニューロン新生と運動機能の改善との関係性について分かりにくいという側面があった。そこで同時に梗塞巣を限局するモデルを作出して比較検討した。そのため、新たなモデルの確立と運動負荷が新生ニューロンの発生・分化・移動に与える影響を評価し、本モデルと比較研究を実施したため、当初予定していた実験計画を進めることができなかったため、次年度使用額が生じた。
新たに脳梗塞が限局するモデルも確立されたので、今後、中大脳動脈血栓による脳梗塞モデルとの比較研究を進め、運動負荷による運動機能の回復と新生ニューロンによる再構築のメカニズムの解明のために使用する。
すべて 2015 2014
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常葉大学保健医療学部紀要
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