研究実績の概要 |
本研究では2型糖尿病に起因する骨格筋の毛細血管退行を予防するために運動及や高酸素プレコンディショニング,さらにこれらを併用した予防的介入法を開発する.その予防効果と作用機序を検証するために筋毛細血管ネットワークを可視化し,血管新生因子・新生抑制因子の調節系因子について解析を行い,運動と高酸素の各々の効果及び併用効果を検証する計画である. 平成26,27年度は2型糖尿病モデルであるGoto-Kakizaki(GK)ラットを使用して,低強度運動や高強度短時間運動を実施した.その結果,運動を実施していない糖尿病ラットのヒラメ筋における毛細血管は退行し,血管新生因子の低下,血管新生抑制因子の増加を観察した.一方,毎日,トレッドミル走行運動を実施した糖尿病ラットでは,ヒラメ筋毛細血管の退行を減衰させ,血管新生因子の低下や血管新生抑制因子の増加も減衰させた.また,低強度運動と高強度短時間運動による強度による差はなく,共に同等の効果が得られた.これらの結果から運動強度に関わらず,運動は糖尿病の合併症である末梢組織(骨格筋)の毛細血管後退を予防し,微小血管循環障害を予防できることを明確にした. 次に軽度高圧高酸素チャンバーを作製し,高酸素によるプレコンディショニングでの筋毛細血管の影響について,1型(ストレプトゾトシン投与)及び2型(GK, ZFDM)糖尿病モデルラット用いて予備検討した.平成28年度は1.25気圧チャンバー内に1日12時間高濃度酸素に曝露したところ、HbA1cは低下し,骨格筋の毛細血管退行や代謝活性等について改善傾向にあった。さらに運動と高酸素を併用したところ、改善傾向が増強したエビデンスが得られた。
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