研究課題/領域番号 |
25282170
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター |
研究代表者 |
俵 紀行 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, メディカルセンター, 先任研究員 (30344279)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | mfMRI / 運動負荷 / 骨格筋 / T2値 / DESS / 筋機能的MRI |
研究概要 |
平成25年度は、課題1である「新しいT2値計測法を用いたmuscle functional MRI(mfMRI)の改善(主として高空間分解能化による有用性拡大の検討)」を中心に研究に取り組んだ。これまで我々が活用してきたT2値計測のための高速撮像法であるSE-EPIは、時間分解能に優れているが、空間分解能は極端に劣るという特徴を有していた。そこで、時間分解能と空間分解能の両者に優れた高速撮像法として、Double Echo at Steady State (DESS)シークエンスを用いたT2値計測法に本研究では着目し、空間分解能と言う点での改善を図ることを目的とした。このDESSシークエンスにより取得したT2値を輝度値にしT2値の分布を示した画像(T2マッピング)をmfMRIへ応用し、数値解析上のシミュレーションと実験的検証との両方の側面より問題解決に取り組む。具体的な検討内容は以下に示すとおりである。 実験1:ヒトの軟部組織に近いと言われる模擬物質(PVAゲルファントム)を用いて、DESSにおける条件の最適化に関する検討を行う。 実験2:実験1と同様の検討をヒト骨格筋に対して行う。被検者は健康な成人男性約10名を予定している。 実験3:mfMRIにおけるT2値計測法としてDESSを使用し、これまで我々が検証に成功している体幹部深部筋もしくは頸部屈曲に関与する各筋に対して、実際に運動に誘発された筋活動への解析に応用を試みる。被検者は健康な成人男性約10名を予定している。 上記の実験結果を総合的に分析し、mfMRIの改善に関して検討を行う
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DESSを用いたT2値計測に関する撮像条件については、膝関節の軟骨に関するWelschらの先行研究の報告を元に個なってきた通りに行ってきたが、元々我々が対象とするのは骨格筋である。そのため、我々でも撮像条件に関する検証を行ったところ、膝関節の軟骨と骨格筋とは若干違う挙動を示しており、骨格筋に関する最適な撮像条件は別途設定する必要があることを明らかにできた。骨格筋と膝関節の軟骨との間に撮像条件の相違点が生じた理由としては、次のとおりである。膝関節の軟骨に関してはT2値の正確性よりも描写の正確性を重要視し設定していた。一方で骨格筋は描写による撮像条件の相違はほとんどないことからT2値の正確性を重要視する必要があると我々は考えたことである。 骨格筋に最適化DESSの撮像条件にて、PVAゲルファントムおよびヒト骨格筋に関する比較検討を行った結果、DESSを用いたT2値計測法は問題なく活用できることを示せた。 実際の運動負荷に対するアプローチに関してだが、今回は体幹部の腹斜筋と頸部の屈筋部の筋に対して、アプローチを行った。その結果、体幹部の腹斜筋については腹斜筋の三層構造も可視化できる画像データを取得でき、少なくても外腹斜筋と内腹斜筋の筋活動の変化をとらえることに成功できたという良好な結果を示した。一方で頸部については、MRI装置の原理上、画像データを取得するためのRFパルスの照射が均一になりにくい部位である。この影響に関する改善が進まないままであったため、T2マッピングそのものの均一性という点での精度事態に問題を示した。従って、DESSによる頸部の運動に伴う筋活動の評価は現時点では行えないという状況である。この点については、別途改善策を検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
DESSによるT2値計測およびT2マッピングは、時間分解能と空間分解能の両者に優れた撮像方法である。しかしながら、動きによるアーチファクト(偽画像)の出現も多く、MRIの画像再構成上の問題から、一度に複数個所の部位を評価できる画像としての生成には限界があるかもしれない可能性があることが今年度の研究結果より把握できた。 そこで今後は、まずは画像処理法による改善策の検討を行うことを考えている。 また、今まではT2値を用いていたが、より磁化率に鋭敏な挙動を示すといわれているT2*(T2スター)値を用いることで、時間分解能と空間分解能の両者に優れ、しかもアーチファクトの出現を抑えた画像データの収集に関する可能性についても模索していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
新しい緩和時間(T2値およびT1値)の算出法に活用に関する検討および精度の検証に時間を要したため、実験等の実施計画が遅れてしまった。しかしながら、検討および検証に関しては進んだと思われる。そのため、理論的な部分に関する目途はある程度建った状態である。 新しい緩和時間の算出法の活用に関する方向性は、ある程度の目途が建ったこともあるので、今年度は実際に算出法を活用できるよう、プログラミング等の作成による実用化を目指す。場合によっては、解析用ソフトウェアを用いたプログラミングのコンサルタントを行うなどを考えている。
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