本研究では、運動に誘発された筋活動の総合的な解明と対象筋拡大のための筋機能的MRIの改良に関して研究を遂行した。 その結果、次の3点について明らかにすることができた。 1.1点目としては、骨格筋の横緩和時間(T2)を算出するための撮像条件において、時間短縮を可能にするための条件提示と共にその提示可能となる根拠を示すことができた。これまで、運動生理学分野では、筋活動による骨格筋の変化を捉えるための必要条件として挙げられていた「撮像時間の短縮化」に関しては、一定の見解を得られておらず、算出値の妥当性については疑問視されていた。本研究では、磁気共鳴の物理学的原理に基づいた撮像時間の短縮化の検証を行い、繰返時間(TR)およびエコー時間(TE)に関する設定の妥当性を示すことができた。 2.2点目としては、従来の筋機能的MRIでは評価不可能とされていた体幹部の腹斜筋の筋活動に関して、新たな手法の提案による筋機能的MRIにより評価が可能であることを提示できた。スピンエコー法(SE)やスピンエコー・エコープラナーイメージング(SE-EPI)で解決することができなかった「空間分解能の向上」という問題について、T2算出が可能な別のパルスシークエンスであるDual-Echo Steady-State法(DESS)を活用することで、T2を使った3つ存在する腹斜筋の描写を可能にできることを示すことができた。 3.3点目としては、骨格筋の縦緩和時間(T1)の算出方法において、特殊な撮像法(パルスシークエンス)を使用せずに、従来法の1/60の撮像時間でデータ取得ができる手法を提案し、その算出精度についても検証できた。先行研究の報告を基にTurboFLASH法を用いて撮像条件の調整による撮像時間の短縮化に成功し、その算出精度についても数学的に担保で来ていることを確認できた。
|