研究課題/領域番号 |
25282177
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
井上 勝裕 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (00150516)
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研究分担者 |
山崎 敏正 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授(Professor) (50392163)
前田 誠 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教(Research Associate) (00274556)
藤尾 光彦 近畿大学, 工学部, 教授(Professor) (00284597)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生体信号処理 / BCI / 脳波 / 睡眠 / リハビリテーション |
研究概要 |
本研究では,通常の意識下で使用されるBCIシステムの多様化や性能向上をはかるとともに,無意識下での使用者の状態に応じた環境コントロールが可能なシステムの開発を行い,1日を通して快適な生活支援が可能な快適環境支援BCIシステムを構築するとともに,そのために必要な脳波・心電図・体動・体表面温度等の信号解析手法を確立することを目的として研究を進め,以下の研究成果を得た. (1) 図形注視・想像時の脳波変動解析:図形(縞パタン(横縞,縦縞,斜右上がり縞,斜め左上がり縞))の注視・想像に関して実験を行い,脳波に含まれる周波数成分を特徴量としてパタン認識を行った結果,80%以上の精度で識別可能であることを確認した.また,色付き図形注視時の脳波から注視図形の識別を試みた結果,(青○ or 緑○)-(赤○ or 赤× or 赤□)の2クラスの識別において80%以上の識別が可能であるなど,形状に色を付加することによって判別精度の向上を図れることを確認した. (2) 動作想像時脳波解析:運動準備電位や随伴陰性変動,Negative Slope等の特徴量を利用して四肢動作想像時における単一試行脳波データの識別を試みた結果,被験者による精度の違いはあるものの,最高で80%弱の精度が得られるなど,通常平均加算処理を施さないと顕著に現れない特徴量を利用して,単一試行データからの動作種別の識別が可能であることを確認した. (3) 特徴抽出法に関する検討:パタンスペクトルを用いた高振幅徐波とK複合波の形状解析を行った結果,その相違が明らかとなり,形状特徴量の抽出法としてパタンスペクトルの有効性を確認した.また,ICAの分離行列を用いてソース重心位置を推定する手法を開発し,睡眠脳波に適用した結果,Stage REMでは,重心位置が主として後頭部に出現することに対して,それ以外のステージでは偏りが見られないなど,ソース重心位置の推定による睡眠に関する新たな特徴抽出の可能性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本経費で購入したgTec社製生体アンプを利用した64ch計測可能なシステムの構築に関しては,機種選定に時間を要したため,設計までしか作業が進んでおらず,また,赤外線サーモグラフィ装置に関しても,内部熱雑音の影響の減少方策を検討する必要が明らかになり,自律神経リズムの抽出までは進んでいないが,研究実績に記載したことを含め,以下のようなことを確認できており,おおむね順調に進展しているものと考えている. (1) 多様な情報を用いたBCIシステム:動作想像時脳波を利用したBCIシステムに関して,単一試行データから運動準備電位に関連する特徴量をもとに認識できる可能性を確認するとともに,図形想像時脳波を利用したBCIシステムやSAM音を利用した聴性定常反応によるBCIシステムの実現可能性を確認できている. (2) 簡易型BCIシステムの実現:透過型ヘッドマウントディスプレイと簡易型脳波計測装置(EMOTIV)を用いて,SS-VEPによるBCIシステムを構築し,若い被験者では90%以上の判別精度で識別できることを確認するとともに,3D表示によって,右目・左目に別の刺激を入力できることから,新規のインターフェースを設計・開発し,現在のその有効性を検討している段階である. (3) 特徴抽出法に関する検討:パタンスペクトルによる脳波形状解析や,ICAを用いたソース位置推定に基づく特徴抽出の有効性を確認するとともに,時間-周波数解析によって得られる1Hz帯域の揺動リズム解析によって,自律神経リズムをより短い時間で推定できる可能性を確認できている. (4) 睡眠の質と脳波変動等との関連検討:睡眠全体における脳波の1Hzと2Hz成分の比と睡眠の質に高い相関があることやREM睡眠中のREMsの数や筋電位の標準偏差,第一周期のREM欠落あるいはStage REM潜時の長さが,睡眠の質と関連がある可能性を確認できている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果をもとに,今後,以下のように研究を推進する. (1) 計測システム:64ch同時計測可能な生体信号計測システムを完成させ,動作想像・図形想像時脳波,視覚・聴覚誘発電位の解析を進めて,優位に変動する特徴量や電極位置,効率的な特徴抽出法等に関して検討を行う.また,精度等の問題が明らかになった赤外線サーモグラフィ装置に関して熱雑音等の削減方法を検討し,体表面温度相対変化情報からの自律神経リズム抽出法を確立する. (2) 個別BCI技術の開発とシステム構築:平成25年度に実現したシステムの改善を行うとともに,次にあげる各事項に関して検討を進める.(a)Transient型VEPを用いたBCIシステムの開発 (b)サーカディアンリズムの影響を除去した自律神経リズムからのBCIシステムにおけるエラーポテンシャルに相当する情報抽出法の開発 (c)図形・動作想像,VEP,エラーポテンシャルを複合的に扱うハイブリッド型BCIシステムの設計・構築 (d)体動や自律神経リズムの変動からの睡眠の不安定な状態の推定法の開発 (e)寝苦しさに応じた体動情報と脳波から抽出される情報やECGからの情報との相関調査および寝苦しさの評価として有効な指標となる特徴量の検討. (3) 複合BCIシステムの構築:平成26年度までに開発した手法をもとに,平成27年度に整備予定の電動車椅子,電動ベッド,電動カーテンをシステマティックにコントロールできるBCIシステムを構築するとともに,より本質的な脳波変動等を抽出できる信号解析手法や特徴抽出法の開発を進める.また,最終年度においては,個別に稼働するよう整備したBCIシステムを融合させ,研究室内に仮想生活環境を構築して,統合的なシステムとしての評価を行うとともに,圧電センサ,加速度センサ等の非接触計測が可能なセンサを利用して生体情報を抽出し,BCIシステムの補完用情報あるいは代替用情報として利用可能か検討を行う.
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