研究課題/領域番号 |
25282178
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
石光 俊介 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (70300621)
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研究分担者 |
牧山 清 日本大学, 医学部, 教授 (00139172)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 発声障害 / 発声支援 / 音声 / 音声認識 / 伝達関数 |
研究実績の概要 |
発声機能障害者音声の収録と解析および機能障害者音声データベース構築を行うとともに,発声機能障害者音声の連続サブワード認識の可能性調査とサブワード抽出の検討を行った. (1) 発声機能障害者の音声解析 データベースに追加した片側声帯摘出,片側声帯萎縮,声帯溝症などの音声・体内伝導音解析を行い,各症例について特徴パターンをまとめた.解析は,実際に音声認識に用いられるメルケプストラムなどのパラメータおよびスペクトログラムにより,特徴解析を行った.また,調音素性分析による明瞭度調査実験も行った. (2)発声障害者音声データベースの構築 共同研究者と相談し,今年度は収録を見送り,来年度改めて音声収録を行うこととした.新しい奨励について整理するためである. (3)障害音声発声時の体内伝導音連続音節認識システムの構築 発声障害者発声時における音声認識率や体内伝導音認識率の調査を引き続き行った.また,話者音声への適応化や最適窓長の検討についての成果をまとめると共に,連続サブワード認識の可能性を検討した. (4)明瞭音声-障害音声間の各サブワードレベルでの伝達関数の導出 音声復帰のための各サブワード間 (明瞭音声-体内伝導音)の伝達関数を作成した.伝達関数は線形予測係数を用いることが有効であることを確認したので,それを用いて音声を音源部と共振部に分離し,音源部は発声障がい者自身の音声,共振部には健常者の音声を基にした伝達関数を用いて,システムを構築するとともに,小型化検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発声障害者音声の収録は期間内に継続的に行い,データベースを充実していく予定である.前年度3症例を加えたため,今年度は新たな症例の収録は行わなかったが,共同研究者と整理して,次年度の新しい症例のデータベースへの追加準備を行うこととした. また,障害者発声時の体内伝導音認識システムの構築として,成果を論文にまとめたほか,システム性能を上げる検討も行うことができた.また,音声評価手法について,さらに詳しく調音素性分析の面からも評価することができた. また,伝達関数の推定についても予定通りに行うことができた.但し,高精度化までは至っていないため,ほぼ予定通りの進捗と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
発声機能障害者音声の収録と解析および機能障害者音声データベース構築を仕上げる.また,発声機能障害者音声の連続サブワード認識とサブワード抽出をシステムに実装する検討を行う. (1)発声障害者音声データベースの構築 昨年度に引き続き,発声機能障害者音声の収録を追加し発声機能障害者発声データベース構築を継続する.個人情報保護について検討した後,データベースも公開し,音声復帰の研究がより推進できるように成果を研究界にも還元したいと考えている. (2)音声評価 これもシステム評価の最終段階に必要である明瞭度評価と誤認識評価を昨年度に引き続きおこなう.音声との比較の他,音質評価として応募者がこれまで音色解析で適用したSD法に基づく手法でも評価を行い,明瞭度の結果を客観評価できる様に検討を行う.また,リハビリテーションも視野に入れ,調音素性分析の面からも引き続き解析を行い,復元音声が肉体的にどの部分の回復に相当するかを明示的に示す検討も行う.また,誤認識の影響も同様な評価を行うことにより比較検討する . (3)実システム構築時における問題点抽出,検討および障害者の方々による評価 スマートフォンや小型タブレット上で実システム構築を目指すが,主として実時間処理における問題点についてここで考察する.具体的には体内伝導音認識の時間応答,認識するサブワード個数の妥当性等に焦点を当て,実時間応答と音質の双方が充分に満足されるように検討をする必要がある.また,携帯電話のように接話型で体内伝導音の取り出しが通話時の接着面を考えて可能である場合と空間で音声を再生する場合についてシステムを考えなければならない.以上を検討した上で,実際に障害者の方々にシステムを提供し,評価して頂くと共に,問題点抽出を実用レベルから探るものとする.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者の前年度の負荷が大きかったこともあり,今年度より研究分担者として参加してもらい,データベース構築をさらに進めようとした.罹患部位をデータベースとして多様性を持たせるため,分担者にはそれを整理して頂き,次年度まとめとして一旦整理して収録を行うこととした.よって,データベース作成に掛かる予定の費用が次年度に繰り越された.
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次年度使用額の使用計画 |
データベースの完成度を上げるために繰り越された費用を有効活用し,音声収録を行う.それ以外は計画通りに活用しているので,最後のシステム化の検討に取りかかる.
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