研究課題/領域番号 |
25282182
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
佐藤 洋 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人間情報研究部門, 研究グループ長 (10260423)
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研究分担者 |
森本 政之 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (10110800)
佐藤 逸人 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30346233)
関 喜一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人間情報研究部門, 主任研究員 (60357316)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 誘導鈴 / 視覚障害者 / 音案内 / 音環境 / 評価計測 |
研究実績の概要 |
今年度は最終年度として運用現場において音案内の性能評価をリアルタイムに可能になる計測器を作成する予定であった。その計測器の表示は被験者実験に基づく人間の音源定位能力を反映し、人間の感覚に適合するものである必要がある。そこで、本研究では実験室実験による人間の方向定位能力の計測、環境内の音響計測結果と人間の方向定位能力の関係、そして評価ツールの開発の実施という手順を取ってきた。 従来の実験室実験における音像の方向定位の精度の報告に比べ、視線のばらつきの結果が、特に垂直方向に大きいことが判明したため、実験室実験により、進行方向に対して2次元の平面において、音響条件と視線の安定度の関係性を明らかにした。その結果、2次元で音を提示した場合でも水平方向の方向定位は従来の知見と同程度であり、被験者ごとに大きな違いは見られなかった。一方、垂直方向については個人差が大きく、被験者間に一定の傾向が見られなかった。さらに、実験の際に音の発生位置に関する視覚情報の有無により、視線が示す音の発生位置の同定結果が垂直方向については異なった。本結果は国際学会において発表した。 また、実空間において影響が懸念される残響音が音の方向定位に及ぼす影響について実験的に検討した。具体的には,音案内の時間特性が残響音場における定位精度に及ぼす影響が,頭部運動に伴う両耳間差の最大変化幅で評価できるかを検証した。 視線計測の安定性が確保されなかったため計測ツールの検証は実施できなかった。ツールの開発については演算アルゴリズムの選定と表示機能の検討を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2次元平面での音の方向と視線の関係性を解明するためのデータ解析の結果、当初前提としていた視線と音源位置の一致が2次元で成立せず、音案内の誘導性能評価に不可欠な、高さ方向の評価が十分な精度でできないことが想定外に起こった。そのため実験及びデータ解析を繰り返し、開発する評価ツールの演算機能の実装と検証の際に視線の安定性の評価並びに補正の方法の再検討を樹分に実施した上で演算精度の確認を行う必要が新たに生じた。 また、残響音が音の方向定位に及ぼす影響についての検討については、頭部運動に伴う両耳間差の最大変化幅の目安となる両耳間時間差の時間変動のピーク値に着目することを発見し、計測アルゴリズムへの追加検討が必要な状況である。 これらの原因により、視線計測の安定性が確保されなかったため、計測ツールの検証は実施できなかった。ツールの開発については演算アルゴリズムの選定と表示機能の検討を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
誘導鈴の垂直方向の定位精度および垂直方向が変化する場合の水平方向の定位精度を実験室内実験で検討する。その際に両耳間時間差の時間変動のピーク値に着目する。 このため、視線計測により、音源定位計測を実施する際に、特に現場で実音源が視覚的に確認できない場合に視覚情報が音源定位に及ぼす影響を把握する。 また、体育館等の比較的大きな空間を用いて歩行実験を実施し、ツールによる評価の有効性について現場に近い状況で確認し、音の方向性の歩行時の感じ方と評価ツールの表示が一致するかどうかについて検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2次元平面での音の方向と視線の関係性を解明するためのデータ解析の結果、当初前提としていた視線と音源位置の一致が2次元で成立せず、音案内の誘導性能評価に不可欠な高さ方法校の評価が十分な精度でできないことが想定外に起こった。そのため、実験及びデータ解析を繰り返すことにより、演算機能の実装と検証の際に視線の安定性の評価の実施を行い、補正の方法の再検討を樹分に実施した上で演算精度の確認を行う必要が新たに生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
実験及び実測のための記録メディア等の消耗品、研究代表者と神戸大学の研究分担者との研究打ち合わせ、被験者への謝金、論文投稿費、およびプログラム開発に関わるソフトウェアの購入に利用する。
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