研究課題/領域番号 |
25282183
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
西井 淳 山口大学, 理工学研究科, 教授 (00242040)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 二足歩行 / シナジー / UCM解析 / 成長 |
研究概要 |
ヒトの歩行中の各関節軌道を観察すると一歩毎にばらつきが観察される。しかし,転倒を防ぐ上で重要と思われる瞬間においては,各関節のばらつきが打ち消しあうことで足先位置等のばらつきは抑えられている。このような関節間の相補的運動を関節間シナジーと呼ぶ。本研究の目的は,この関節間シナジーに着目する事で成長や進化に伴う歩行様式の変化を明らかにし,また,歩行中の関節間シナジーの生成機構を推定する事である。初年度は以下のように研究をすすめた。 (1) 成長に伴う歩行様式の変化を関節間シナジーの視点から行うために,子どもおよび成人の歩行データの収集と取得データのUCM解析を進めた。現在までに,成長とともに両脚支持期に体幹位置を安定化する関節間シナジーが強くなる傾向があることを示唆する結果を得ており,その成果の一部は国際学会で発表を行った。ただし,この点については現在も例数を増やす事で検討を進めている。また,加齢による変化をさらに調べるため高齢者の歩行計測も開始した。 (2) 歩行中の関節間シナジーは神経系による制御により生成されているのか,もしくは,骨格系の物理的拘束で生まれているのかを探るため,股関節,膝関節,踝関節をもつ受動歩行機のシミュレーターを構築し,受動歩行機とヒトの関節間シナジーの比較を開始した。ヒトの遊脚中期には躓きを防ぐために有効と考えられる関節間シナジーが観察されるが,その生成には物理構造が大きく寄与していることを示唆する結果を現在までに得ている。さらに,筋活動がいかに関節間シナジー生成に寄与しているかも探るため, 歩行中の筋電解析によって筋シナジーと関節間シナジーの関係を探る予備実験も行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,成人と子どもの歩行における関節間シナジーの解析及び,成人の歩行中の筋シナジーと関節間シナジーの関係を探る予定であった。前者については順調に進んでいるが,後者はまだ予備実験にとどまっている。一方で,次年度以降に行う予定であった受動歩行機の歩行解析や, さらに加齢に伴う変化を探るための高齢者の解析をすすめることができた。全体としては本研究の目的である「歩行における関節間シナジーの発現機構と進化・成長に伴う変化」を探るためのデータの蓄積がすすんでいるので,現在までの達成度はおおむね順調と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き成人,子ども,高齢者,受動歩行機の歩行データの収集および解析をすすめることで,成長に伴う歩行様式の変化と関節間シナジーの生成機構の考察を行う。また,脳からの運動指令が歩行中の関節間シナジー生成に如何に寄与しているかをさぐるために歩行中の筋活動の計測と解析もすすめる。研究の目的の一つに挙げている,進化にともなう歩行様式の変化を探るためには,ニホンザルの歩行解析を行う予定である。 以上の結果を総合的に考察することで,歩行における関節間シナジーの発現機構と進化・成長に伴う変化を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果発表のため国際学会に参加するための国外出張旅費を計上していたが,参加した国際学会が国内で開催されたため支出が抑えられることとなった。また,次年度で行う歩行中の筋活動計測・解析のために筋電計および解析用計算機の追加購入およびデータ解析の謝金が必要であることが予備実験で明らかになったため,残金は次年度のために持ち越すこととした。 残額は翌年度分研究費と合わせて筋電計および解析用計算機の購入,およびデータ解析のための謝金に利用する予定である。
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