| 研究課題/領域番号 |
25282193
|
|---|
| 研究種目 |
基盤研究(B)
|
| 研究機関 | 大阪大学 |
|---|
研究代表者 |
松尾 知之 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00209503)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
| キーワード | 投球障害肩 / 動作解析 / モーションキャプチャー / スポーツ医学 |
|---|
| 研究概要 |
本研究は，投球動作と投球障害肩発症リスクおよび障害発症の関係をprospective 研究（前向き研究）によって明らかにすることを目的としている．前向き研究であるために，発症の状況に応じて，欠陥動作と言われる動作と肩関節に加わる力学的負荷との関係を明らかにすること，肩関節に加わる力学的負荷とＭＲＩ所見異常の関係を明らかにすること，さらにＭＲＩ所見と障害発症の関係を明らかにすることを下位目的とした．
平成25年度は，社会人および大学野球投手22名を対象とし，動作解析実験と肩関節MRI撮影を実施した．社会人投手と大学投手では，それぞれのチーム事情から異なる実験プロトコールを用いた．社会人投手については，16台の高速カメラを備えた光学式動作解析システム（1000Hz）を利用した動作解析実験と投球肩のMRI撮影を年に1回，大学投手は，春と秋の2回にわたって，8台の高速カメラを備えた動作解析システム（300Hz）での動作解析実験と肩関節のMRI撮影を実施した．
投球動作解析の過程において，投球側の橈尺関節において，リリース前後で回外運動していることが明らかとなった．空間（絶対）座標系では前腕は回内方向に回転し続けているものの，それは上腕の鋭い内旋運動が重畳された結果であり，橈尺関節としてみると，リリース前後で瞬間的に回外運動が生じていたことが明らかとなった．
肩関節MRI撮影においては，半数以上に軽度または中等度の異常所見が認められた．上腕骨頭では信号異常がほとんどの被験者に，そして骨軟骨欠損が７名の被験者に認められた．関節唇では，後上方の信号異常が多く認められ，関節窩においても後方部に硬化性変化が認められた．腱板の信号異常は棘下筋付着部に多く分布した．また，肩峰下滑液包の異常は烏口肩峰靭帯付近に多く分布した．これらの所見は，上腕骨頭の異常所見と合致する傾向にあった．
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モーションキャプチャーシステムの不調により，分析時間が数倍に増加したため，実際には，（２）おおむね順調に進展している，と（３）やや遅れている，の中間ぐらいに位置していると認識している．しかし，計画時に予定していた動作とMRI所見との因果関係の分析に関しては，中間的な分析であり，研究全体の最終的な計画にはほとんど影響しない．そのため，（２）おおむね順調に進展している，と判断した．
|
| 今後の研究の推進方策 |
本研究は，同一被験者を縦断的に追跡するプロスペクティブ研究という性質上，投球障害肩やMRI 異常所見の症例蓄積のために，基本的に上記の研究計画を継続的に実施する．したがって，内容的には平成２５年度に実施するものと同じであるが，投球障害肩あるいは投球障害肘の発症を追跡的にモニターする．
運動と障害との関連性について，以下のような相関分析を実施する：①モーションキャプチャーで得られた運動学的変数（キネマティクス）を独立変数とし，運動力学的変数（キネティクス）やMRI 画像診断による所見を従属変数とした相関分析（単相関分析，重相関分析，ロジスティック分析），②運動力学的変数（キネティクス）を独立変数とし，MRI 画像診断による所見を従属変数とした相関分析（単相関分析，重相関分析，ロジスティック分析）
また，力学モデルによる検証として，有限要素法による肩甲上腕関節の骨，軟骨，関節唇モデルを利用して，モーションキャプチャーにより得られた動作データにこの肩関節モデルを適合し，筋骨格モデルによる動力学解析を行う．それによって算出した肩関節の応力分布とMRI 所見との関係を，上記と同様の相関分析にて比較検討する．
|
| 次年度の研究費の使用計画 |
次年度以降の予算の前倒し支給を受けた際，本年度の予算が不足しないよう，若干多めの支給を受けた．このために，その分，若干の残額が生じることとなった．
次年度も継続して，投球動作解析実験と投球肩のMRI撮影を行うために，被験者や実験者あるいはMRI技師への謝金，MRI撮影時のMRI撮影料,旅費などが必要となる．今年度の残額は，次年度分と合わせて支出する予定である．
具体的には，大学野球投手13名を春と秋の年2回，投球動作解析実験とMRI撮影のための謝金（計20万円）とMRI撮影料（計50万円）．また，社会人野球投手10名の投球動作解析実験とMRI撮影のための謝金（20万円）．社会人野球投手のMRI撮影は，研究協力者の関連施設が利用できるため，科研費からの負担はない．これらの実験の実験補助者やMRI撮影の技師への謝金（10万円）と分析補助者のための謝金（25万円）．この他に，実験実施および研究成果発表のための国内旅費（15万円）を計画している．
|
