研究課題/領域番号 |
25282196
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
斉藤 利彦 学習院大学, 文学部, 教授 (20178495)
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研究分担者 |
佐藤 陽治 学習院大学, 付置研究所, 教授 (20154114)
瀬川 大 日本女子体育大学, 体育学部, 准教授 (20637334)
井澤 直也 日本女子体育大学, 体育学部, 教授 (30299953)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 運動部 / 校友会 / 学校文化 / 中等学校 / 校友会雑誌 |
研究実績の概要 |
本研究は、近代日本スポーツ史研究において重要な位置をもつ、旧制中等学校におけるスポーツの成立と発展過程を、中等諸学校の校友会運動部の動向を対象として実証的に解明することを目的とする。従来、大学や旧制高等学校におけるスポーツ史の研究の蓄積はあるが、中等学校に関してはその数の多さや地域ごとの多様性から、さらには中学校に比して高等女学校や実業学校の運動部の研究に関しては、ほとんど蓄積はなされてこなかった。本研究は、重要な史料として各中等諸学校の『校友会雑誌』に着目している。 『校友会雑誌』上の運動部報の欄においては、各部の活動が詳細かつ具体的に、さらには生徒たち自身の記述により報告されており、それらを対象として分析を続けてきている。 その検討の結果、今年度の研究実績として、代表者の斉藤利彦は、編著『学校文化の史的探求』(東京大学出版会、2015年4月)を刊行し、論文「『校友会雑誌』にみる学校文化」の中で、中等諸学校のスポーツ文化と校友会運動部に関する分析を行った。また論文「校友会運動部の改編と学校報国団の成立」(『学習院大学 教育学・教育実践論叢』2014年12月)において、学校報国団が創設される中での運動部の対応についての分析を行った。 分担者の井澤直也は、前掲書『学校文化の史的探求』所収の論文「実業学校『校友会雑誌』にみる青年の社会観・実業観」において、実業学校生徒の運動観についても検討を加えた。分担者の佐藤陽治は、高等女学校における庭球部の動向に関し分析を進めている。また分担者の瀬川大は、特に長野県を対象として、野球部の対校試合が組織されていく過程に検討を加えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、前年度に引き続き、全国の中等学校の『校友会誌』を調査・閲覧・分析し、かつデータ・ベース化を行い、明治期から昭和前期までの校友会運動部および各部の展開を通時的に分析する作業を行った。 具体的には、申請者がすでに行った全国アンケート調査をもとに、①サンプル的中等学校の『校友会誌』の通時的分析による校友会運動部の展開の分析、②校友会運動部に関する史料の所在状況の把握と、『校友会誌』記事のデータ・ベース化、③上記の作業と並行して、各地の県立図書館、国会図書館、東京大学法学部明治新聞雑誌文庫等における『校友会誌』の所蔵状況および校友会運動部の記事の調査、④地域単位、ブロック単位、全国単位の「対校競技」「遠征試合」への展開とその動因・パターンの分析、⑤先行研究および戦前における『校友会誌』に関する基本文献・史料の収集と検討を行った。 以上の検討をふまえて、特に具体的な運動部としては野球部と庭球部、時期としては明治期、および学校報国団が結成された昭和15年以降の時期を対象とした分析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
すでに行った予備的な調査の中で着目した中等学校および各県立図書館等に所蔵されているに『校友会誌』に焦点を当て、その中から、いくつかの重点的な中等学校および都道府県を選び、現地調査と『校友会誌』の閲覧を行ない、明治から昭和前期までの校友会運動部の展開を通時的に明らかにしていく。例えば、所蔵状況をもとに対象とするのは、前年度に引き続き青森県立弘前中学校、弘前高等女学校、岩手県立盛岡中学校、富山県立富山中学校、大阪府立大阪尋常中学校、山口県立下関商業学校、滋賀県立八幡商業学校、鳥取県立鳥取中学校、島根県立島根尋常中学校、徳島県立徳島中学校、鹿児島県立鹿児島第一中学校等である。 その際、各校友会運動部の活動の検討を行ない、次の視点から比較分析を進めていく。すなわち、中等諸学校の中でも 中学校、実業学校、高等女学校のそれぞれの校友会運動部の特質と共通性、あるいはその違いを明 らかにしていくこと。特に、男子中等教育と女子中等教育における制度・政策・学校文化・スポーツ文化の違いが校友会運動部にどう反映したのか、あるいは都市部と地方という学校所在地の違いが校友会運動部や対校競技のあり方にどのように反映したのか、についても検討を加える。また、文化部の活動を含めた校友会活動の全体を視野に入れ、その中での運動部活動の特質を解明していく。 そして、以上の研究成果として、報告集をまとめて刊行し、さらに学会発表を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
残金額が生じたのは、いずれも分担研究者によるものである。一名は、今年度後半期において体調不良となり、十分な調査・研究を行えなかった。もう一名は、長野県における連合協議運動会の成立と組織化過程に関し、現地での史料収集や分析を3度にわたり精力的に行い、また研究会での報告も行ったが、若干の残額を残すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
新たな分担研究者を加え、次年度の研究計画に記したように精力的に調査・分析を進めていく。長野県での調査に関しては、次年度は明治期の史料収集はほぼ終え、さらに大正期・昭和初期の調査や検討も行っていく。また、本科研費計画の最終年度として、『報告書』作成を進めていく。
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