研究課題/領域番号 |
25282197
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
仰木 裕嗣 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 准教授 (90317313)
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研究分担者 |
太田 憲 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特任准教授 (10281635)
瀬尾 和哉 山形大学, 教育文化学部, 教授 (60292405)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スポーツ流体力学 / 慣性センサ / スキージャンプ / 野球ボール |
研究実績の概要 |
本研究では,スポーツにおける飛翔体の運動を,飛翔体自身に内蔵または装着した慣性センサによって計測し,得られるセンサデータから飛翔中に作用する流体力の推定に取り組み,スポーツ飛翔体の飛翔メカニズム解明を第一の目的とする.第二目的として,飛翔体を計測する目的で開発した慣性センサを用い,飛翔前すなわち投擲・投球・踏切動作などの選手の動作を解析する事を,飛翔運動の解析と同時に達成することも本研究の目的とする. 平成26年度は,主としてスキージャンプおよび野球の投球動作について研究を進めた.スキージャンプにおいては,飛翔する選手の身体セグメントの姿勢変化を慣性センサによって推定する方法論を構築することに努めた.身体およびスキーの計9カ所に装着した9軸慣性センサによる計測データから,滑走開始・跳び出し,飛翔,着地までの一連の身体動作を推定するアルゴリズムの違いによる精度検証を行なった.同時に,選手が飛翔した軌跡を明らかにするために,レーザー計測装置によってスキージャンパーを捕捉するシステムを平成25年度に構築したが,平成26年度には,新たに下方から照射し選手を追尾するレーザー計測装置を追加して開発し,実地検証実験を執り行った.夏季・冬季それぞれの時期におけるコンディションの違いによる計測結果の比較検討を行なうために,夏季は新潟県妙高高原において,冬季は山形県蔵王において計測実験を先に述べた慣性センサと併用して行なった.飛翔したデータから得られる位置情報が飛翔後,瞬時に得られることをはじめ,速度,加速度ベクトルの算出が格段に迅速にできることが明らかになった
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スキージャンプにおけるジャンパーの飛翔特性の解明については,これまでその飛翔軌跡の撮影と解析に膨大な時間を要していたものが,瞬時にして計測可視化されるという画期的な成果を達成している.また,野球・ソフトボールにおける投球動作および投球されたボールに関する力学解析においては従来までは明らかにすることが困難であったボールとの力点位置の推定方法を提案できている.また飛翔したボール軌跡からの空力特性推定についても様々な球種において同定を行なってきている.したがって,スポーツ飛翔体のいくつかの事例においてではあるが,飛翔前の身体動作と飛翔後のスポーツ飛翔体の振る舞いとの関連を明らかにしたと言える.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度である平成27年度は,これまで開発した基盤技術のすべてを投入したスキージャンパーの飛翔計測実験を実施する.レーザー光を用いた選手の移動軌跡データからの速度,加速度算出を着陸後ただちに提示して,トレーニングへのフィードバックを行なう.また飛翔データから計算される空力特性と,これまでに実物大模型によって執り行って来た風洞実験データとの比較検討を行なう.また,慣性センサによる姿勢変化の推定と,飛翔軌跡データとの比較検討によって最適飛翔を実現する選手へのフィードバックシステムの構築を最終課題とする. 野球におけるボール飛翔についての課題は,無回転ボール・カーブボールを実現する投球フォームの力学解析,ならびに飛翔するボールの空力解析を行ない一連のボール研究の総括とする. 本研究の期間内に得られた成果については,日本機械学会スポーツアンドヒューマンダイナミクス講演会をはじめとする学会において発表を行なう予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
株式会社ナノテックに依頼したシステム開発が予定よりも安価に調達できた.これを用いた実験を行ったところ,さらにレーザー位置計測装置と他の計測器との連携機能のうち,選手情報,映像との同期についての可能性が明らかになったため,平成27年度に繰り越した上で拠出することにした.
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次年度使用額の使用計画 |
選手情報,映像との同期についての可能性を明らかにするため,レーザー位置計測装置と他の計測器との連携機能を強化するための費用に充当する.
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