研究課題/領域番号 |
25282212
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
溝上 裕士 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (70268556)
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研究分担者 |
蕨 栄治 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70396612)
柳川 徹 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10312852)
磯辺 智範 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (70383643)
正田 純一 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90241827)
宇都宮 洋才 和歌山県立医科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60264876)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生活習慣病 / 過食肥満マウス / NASH / 腸内細菌叢 / 自然免疫 |
研究概要 |
p62:Nrf2-DKO NASH自然発症モデルマウスを用いて、Kupffer細胞の貪食能についてSPIO-MRIにて評価検証した。マウスを8、25週齢まで飼育しNASHマウスを作成、マウス用1テスラーMRIを用いてSPIO-MRI撮影を行ない、シグナル低下量を評価した。マウスは、WT、Nrf2-null、p62-null、p62:Nrf2-DKOの4系統のマウスを用いた。また、p62:Nrf2-DKOに摂餌制限を行い、同様の実験を行った。さらに、25週齢の肝臓中LPS binding protein発現量の測定を行った。8週齢でのSPIO-MRIのシグナル低下量は、WTに比べp62-null、p62:Nrf2-DKOは有意に低下した(P < 0.01)。また、Nrf2-nullマウスも有意に低下した。さらに、25週齢のSPIO-MRIのシグナル低下量は、WTに比べp62-null、p62:Nrf2-DKOは有意に低下した。p62:Nrf2-DKO NASH自然発症モデルマウスでは、8週齢NASH発症前、25週齢NASH発症時ともに、T2値の低下量の減少がみられた。また、摂餌制限を行ったp62:Nrf2-DKOマウスにおいても、自由摂食p62:Nrf2-DKOと同様にWTに比べ有意に減少した。さらに、25週齢の肝臓中のLPS binding protein発現量が、WTマウスに比べ、p62-null、DKOマウスで有意に増加していた。このことより、p62:Nrf2-DKOマウスでは、肥満症とは独立してKupffer細胞の貪食能が低下していると考えられる。本年度の研究成果として、p62:Nrf2-DKOマウスにおいてKupffer細胞の貪食能の低下による肝臓内LPSの増加はNASHの発症と進展に重要な因子であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis : NASH)の発症機序は解明されていない。しかし、腸内細菌のbacterial translocationによるエンドトキシン(LPS)の増加、Kupffer細胞のLPS処理能力の低下が慢性肝障害の一因となっている可能性が指摘されている。我々の作製したp62遺伝子およびNrf2遺伝子の二重欠失マウス(p62:Nrf2-DKO)は、通常食餌による飼育下でNASHを自然発症するマウスである。本年度は、p62:Nrf2-DKOマウスにおいてKupffer細胞の貪食能の低下による肝臓内LPSの増加はNASHの発症と進展に重要な因子であることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方向として、第一に、Kupffer細胞の貪食能の低下が直接的にNASH発症に関与しているか検討する。そのために、p62 : Nrf2 DKOマクロファージ特異的レスキューマウスを作製し、NASH発症が改善することを確認する必要がある。また、腸内環境の変化も検討の必要がある。糞便中LPS濃度がp62-KOマウスで増加し、摂餌制限DKOマウスで減少していたことから、過食よって腸内細菌叢に変化が生じている可能性がある。DKOマウスにプロバイオティクスを投与することにより、肝病態が改善したことから、腸内細菌叢がNASH発症に重要であると考えられる。
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